研究課題/領域番号 |
16K13599
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
磯村 朋子 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD) (20771926)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 視線 / 社会認知機能 / 共感性 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラムにおいて、他者の顔や行動の観察時や、社会的相互交渉場面などにおいて、特殊な視線配分を示すことが知られている。しかし、その特異性が社会認知機能の障害にどのように結びついているのかは不明なところが多い。そこで本研究では、視覚入力と社会認知能力の相互関係を明らかにすることを目的として、研究を進めてきた。 まず、定型発達の成人が社会的交渉場面においてどのような視線配分、注視パターンを示すのかを調べる実験を行った。モニター上に提示された様々な物の中から、他者に指示された物を取る(モニター上で選択する)、というコンピューター課題を実施した。置かれた物の中には他者からは見えない場所に置いてある物があり、他者視点と自己視点で指示の内容がコンフリクトするような場合でも、常に指示者の視点に基づいて指示に答えることが求められた。その際の被験者の視線をアイトラッカー(Tobii TX-300)にて記録した。得られた視線データを時系列的に解析し、エゴセントリシティ(自己視点優先性)についての指標を算出した。それらと自閉症指数との間の相関性を調べたが、有意な関係性は見られなかった。そこで、社会認知機能のひとつである共感性に着目し、社会交渉場面における視線のエゴセントリシティが共感性とどのように関係するのかを調べた。共感性の指標として、他者の表情に対する自発的な模倣反応を計測した。その結果、エゴセントリシティが高い被験者群は、同指標が低い被験者群に比べて、より顕著な表情模倣反応を示す傾向が見られた。この結果から、社会交渉場面における視線配分と他者に対する共感性には相互関係が見られることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り実験を実施し、当初の仮説どおりの結果は得られなかったものの、社会交渉場面における視線パターンと他者に対する共感性には相互関係が見られることがわかり、一定の結果を収めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、よりリアルな社会相互交渉場面を設定し、その際の視線や生体反応を計測する実験を実施する予定である。それにより、視覚を含む様々な感覚入力と社会認知機能の相互関係を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)実験に使用する備品やソフトウェアを購入する予定だったが、既存のもので十分であったために新たな物品の購入を見送った。
(使用計画)来年度は新たに高性能のデスクトップを購入するほか、その他計測機器の購入も検討しているので、今年度余剰分をそれらにかかる支出に用いる。翌年度分として請求した助成金は、当初の計画通り物品購入や被験者への謝金、国内外の出張費に使用する予定である。
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