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2016 年度 実施状況報告書

英語を学習する日本人に英語のみ読み書き困難が出現する可能性の調査

研究課題

研究課題/領域番号 16K13602
研究機関宮崎大学

研究代表者

櫛山 桐加  宮崎大学, 語学教育センター, 准教授 (30587994)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード学習障害 / 英語学習 / 認知特性 / 音韻意識
研究実績の概要

研究初年度の2016年は、知能のPASS理論を踏まえ、英語力と同時処理および継次処理の関係、もしくは英語の音韻意識の高さによって外国語学習の適性を予測できるのかを調査することを目的に、量的研究と質的研究を同時並行で実施した。認知検査用に、DN-CAS、レーヴン色彩マトリックス検査、遂行機能障害症候群の行動評価(日本版BADS)、標準注意検査法(CAT)・標準意欲評価法(CAS)、The Phonological Awareness Test 2 (PAT 2)、Rapid Automatized Naming Tests(RAN)を購入している。
量的研究として、2016年10月には、PAT 2を書面で解答する形式に変更して前回とは異なる大学生150名に実施した。文のデコーディングと関連性が高いをされる継次処理能力との比較を考え、集団で実施可能な継次処理能力テストとしてCATのPaced Auditory Serial Addition Test(PASAT)を実施した。
質的研究としては、被験者を募り、DN-CAS、BADS、CAT・CAS、PAT 2、英単語RAN、つづりの規則に従わない不規則語、つづりの規則に従う非単語の読みについて英語力と比較を行った。7人について調査をすることができ、2017年6月に認知心理学会で口頭発表する。
また、英語に学習困難があり、書字困難と注意欠陥のある自閉傾向の中学生のアセスメントを実施、音韻意識とフォニックスを中心に指導を行い、その指導内容については2016年11月にLD学会で口頭発表を行った。
このほか、英語学習の困難に特化した研究があることを周知する目的で、「英語学習のつまずきを考える~困り感に寄り添う支援のあり方」と題して4人の研究者・実践者を招き、中高の教員を対象にシンポジウムを実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2016年4月、大学生150人に対してPAT 2とRANの集団検査を実施した。PAT 2は各被験者にボイスレコーダーを渡し、口頭での解答を各自で録音させたが、他の参加者の回答を聞いてから回答する行為が散見され、このやり方では信頼性が低下することが確認された。また、RANは個別に実施したが、ほとんど差が付かないためデータとして使いにくいことも確認された。
この反省を踏まえて2016年10月に実施した検査では、PAT 2では信頼性の高い解答が得られたが、PASATでは先にメモを取り、後から数的処理をする行為が複数見られたほか、難易度の高さからか途中で投げ出す行為も確認され、PASATについて信頼性の高いデータは収集できなかった。
質的検査として2016年11月に発表した英語学習困難と書字困難を持つ自閉傾向のある中学生の研究に関して、海外からの学会参加者から、音韻意識とフォニックスは主に読字障害(ディスレクシア)の支援方法であるが、この中学生は音韻障害を持たないことから、まずディスレクシアは考えられないことを指摘された。アセスメントからやり直す必要があり、ディスレクシア以外の言語困難、例えば特異的言語障害の検査が必要とのことであった。
この研究そのものが、英語学習困難を特定できるような認知特性を探し出すことを目的であるため、「うまくいかなかった」検査も十分に研究成果の一つとしてあげることができる。このため、必要な検査を絞りこんでいるという点で、おおむね順調に進展していると判断している。

今後の研究の推進方策

一連の結果を受け、2017年4月にはDN-CAS簡易版と英語の音韻意識、英単語RAN、つづりの規則に従わない不規則語、つづりの規則に従う非単語の読みについて、英語力と比較する研究を実施する計画である。
これによりPASS理論による認知特性の分類で英語力が予測可能か否かを検証し、予測が困難であれば別の方法を検討しなければならない。現在のところ、母国語である日本語の知識と運用能力を英語力と比較することを次段階として検討している。
質的研究として実施している自閉傾向の中学生の英語学習困難については、先行文献に当たり、自閉傾向による言語障害あるいは自閉症特有の文脈理解困難がある可能性などを考慮し、2017年4月に再度、アセスメントを実施する。このためにK-ABC、J-coss、SCTAW 標準抽象語理解力検査、LCSA 学齢版 言語・コミュニケーション発達スケールを購入し、検査に向けた準備をしている。

次年度使用額が生じた理由

この研究は、英語のみ困難を示す学習者を特定する方法の検証を目的とするため、複数の検査や調査を実施し、適切な検査方法を絞り込む必要がある。初年度に研究に必要な備品を購入し、実際に検査をしてみた上で、初年度の研究では英語のみ困難を示す学習者を特定できないと判明した場合、別の備品の購入が必要になる。どの備品が必要になるかは初年度の研究の結果次第であるため、次年度に備品を購入する費用を確保する必要があった。

次年度使用額の使用計画

初年度は、DN-CAS、レーヴン色彩マトリックス検査、遂行機能障害症候群の行動評価(日本版BADS)、標準注意検査法(CAT)・標準意欲評価法(CAS)、The Phonological Awareness Test 2 (PAT 2)、Rapid Automatized Naming Tests(RAN)を購入した。初年度の検査により、認知検査よりも母国語である日本語の知識と運用力を検査する必要があることが示唆されたため、学力検査も含むK-ABCを次年度に購入する。このほか、J-coss、SCTAW 標準抽象語理解力検査、LCSA 学齢版 言語・コミュニケーション発達スケールなども購入する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 発達障害の生徒への英語読み書き指導2016

    • 著者名/発表者名
      櫛山桐加
    • 学会等名
      日本LD学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-11-20 – 2016-11-20

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公開日: 2018-01-16  

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