本研究では、自閉症スペクトラム障害のある児童における言語コミュニケーションの個人差を明らかにすることを目的とする。これまで定型発達児との比較で一括りにされることの多かった自閉症スペクトラム障害のある児童の特徴を詳細に分析することで、より個別のニーズに合った支援方法の提案を目指している。本年度は、自閉症スペクトラム障害児および定型発達児を対象に、対象指示コミュニケーション場面を想定した課題を実施する予定であったが、課題の作成と妥当性の検討に時間がかかっていることから、当初の計画を変更し、自閉症スペクトラム障害のある子どもを持つ保護者20名を対象に、日本版CCC-2「子どものコミュニケーション・チェックリスト」を用いて日常場面での子どものコミュニケーションにおける言語的な側面の評価を実施した。また、個別の学習支援場面の観察も継続して行いつつ、学習に困難のある児童生徒18名を対象に、発達障害の要支援度評価尺度(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD ; MSPA)を用いて、幼少期からの特性の評価も行った。評定値をもとに、クラスター分析を行った結果、診断名だけでは理解できない共通点・相違点を明らかにすることができた。今後、コミュニケーションに関する縦断的な変化も含めて個人差を検討していく必要があると考えている。さらに、自閉症スペクトラム障害の評価に用いるADOS-2(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition)の臨床用研修会に参加し、使用方法を習得した。今後、研究使用資格を取得した上で、診断の妥当性の確認をするとともに、自閉症スペクトラム症状の程度との関連なども検討していく予定である。
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