単純な無機固体の中には、脱溶媒により結晶体積が大きく減少する物質も知られている。しかし、単純な無機固体においては、脱溶媒により結晶の対称性が変化し、単結晶性を失うのが一般的である。本研究において開発したイオン結晶は、単結晶を維持しつつ、脱水/再水和により可逆的な大きな体積変化を示す特性を有することが明らかとなった。この結晶中においては、水素結合やπ相互作用などの多数の分子間相互作用が存在しており、このような分子間相互作用を複合的に利用することが、柔軟な構造変化を示す結晶を得る鍵であることを示した。このような小分子の脱着に応じて体積が変化する単結晶は、今後、機能性材料としての応用が期待される。
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