本研究では、細孔への分子吸着により電子状態が段階的・可逆的に変化する多孔性ナノシートを開発する。このようなナノシートにおいては、サイズの定まった細孔がガス・生体分子やイオンなどを認識し、逐次段階的に電子状態が変化する。そのため、電気伝導性やスピン物性を評価することにより、存在する分子の種類・量を精密に把握でき、高選択・高感度極薄センサデバイスとしての利用が期待される。当該年度は、以下に関して実施した。 (1)金属錯体ナノシートのモルフォロジ制御:気液界面におけるナノシート作製手法において、展開液の濃度・溶媒種、反応時間、表面圧縮度等の条件がナノシートの表面モルフォロジに与える影響を明らかにした上で、被覆率の高い均一なナノシートの作製に成功した。 (2)金属錯体ナノシートの配向評価:SPring-8における放射光X線回折測定の結果、得られたナノシートは高い配向性を有することが明らかとなり、(1)の作製条件が配向度に大きな影響を及ぼすことがわかった。 (3)金属錯体ナノシートの配向と電気伝導性の相関解明:気液界面用いて作製した高配向金属錯体ナノシートの電気伝導度評価を行った結果、関連の金属錯体ナノシート(100nm以下)において最も高い電気伝導度を示した。 (4)センシング評価システムの設計:金属錯体ナノシートのガスセンシング能を評価するために、水蒸気および有機ガス蒸気下(蒸気圧制御機構付き)でナノシートの抵抗率測定が可能な評価システムの設計を行った。 (5)金属錯体への欠陥導入:前年度に得られた金属錯体への欠陥導入に関する新たな知見をもとに、配位子と金属イオンの組み合わせを変化させ、欠陥導入の有無を確かめた。その結果、種々の組み合わせにおいて、配位子と金属イオンの比を変化させることにより、段階的に欠陥導入が可能であることがわかった。
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