研究課題/領域番号 |
16K13611
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
正村 亮 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50757599)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | π共役系高分子 / イオン液体型高分子 / 共重合体 / 自己組織化 / イオン伝導 / 電子伝導 / ミクロ相分離 / 混合伝導 |
研究実績の概要 |
本研究は電子(正孔)伝導体であるπ共役系高分子とイオン伝導体であるイオン液体型高分子を複合化させ、電子およびイオン輸送チャネルが共存する新規有機材料の創成を行う。そのために、精密に構造が制御された“π共役系高分子とイオン液体型高分子の共重合体”を合成し、共重合体の自己組織化により形成されるミクロ相分離構造と、(電子・イオン)伝導性との相関を明らかにすることを目的としている。 平成28年度は、π共役系モノマーとイオン液体モノマーの分子設計と高分子合成、及びイオン液体型高分子のイオン伝導性特性評価を行ない、イオン伝導メカニズムの検討を行った。このうちπ共役系モノマーは、バルクの電気伝導度の向上を期待し、平面性の高い骨格を有するモノマーを中心に検討しており、現在はそのリビング重合特性について検討中である。 一方、イオン液体モノマーについては、電気化学的に安定である脂肪族系骨格を中心に検討しており、数種類の脂肪族骨格を有するイオン液体モノマーの、リビング重合特性評価を行った。さらにこれらのイオン液体型高分子のイオン伝導率を測定した。また、各温度での電気伝導測定により、活性化エネルギーを算出したところ、比較的高い値が算出された。この理由として、イオン液体型高分子中のイオン伝導においては、大きさ(イオン半径)の異なる複数のイオンの伝導が同時に観測されており、その平均値としての活性化エネルギーが観測されたためであると考えられる。すなわち、イオン伝導における活性化エネルギーが大きいイオンが混在していることが示唆された。現在、この結果をフィードバックし、イオン液体の分子設計を再検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、平成28年度中にπ共役系高分子とイオン液体型高分子の共重合体の合成まで行う予定であったが、各ホモポリマーのリビング重合特性評価に予定より時間がかかっており、共重合体の合成まで達成できていない。 ただし、各ホモポリマーの物性評価を前倒しで実施しているため、全体の進捗としては、大きな遅れはないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
各ホモポリマーのリビング重合特性評価を元に、π共役系高分子とイオン液体型高分子の共重合体の合成を行い、共重合体が形成する相分離構造の構造解析と電気伝導性評価を行う。 構造解析は、電子顕微鏡(TEM、SEM)による直接観察や、分光学的手法(XRD、SAXS)を用いたバルクの結晶構造、周期構造の評価から、各共重合体が形成するミクロ相分離構造の詳細な評価を行う。 共重合体の電気化学特性評価から、各キャリア輸送機能を個別に評価する。電子伝導性、イオン伝導性の評価には電気化学的な手法を用い、さらにTime-of-flight 法での電子(正孔)移動度測定と、パルス磁場勾配(PFG)NMR法を用いた各種イオンの拡散係数測定からキャリア輸送機能を個別に評価し、構造と電子伝導性・イオン伝導性との相関を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度で購入予定であった設備備品の選定に時間がかかり、初年度での購入を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、設備備品の購入費用及び、消耗品と学会等への出張旅費に充てる予定である。
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