研究課題/領域番号 |
16K13611
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
正村 亮 鶴岡工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (50757599)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | π共役系ポリマー / イオン液体型ポリマー / 混合伝導 / プロトン伝導 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
本研究は電子(正孔)伝導体であるπ共役系ポリマーと、イオン伝導体であるイオン液体型ポリマーを複合化させ、それぞれ独立した、電子およびイオン輸送チャネルが共存する新規有機材料の創成を行う。そのために、精密に構造が制御された“π共役系ポリマーとイオン液体型ポリマーの共重合体”を合成し、共重合体の自己組織化により形成されるバルク構造と、電子伝導性、イオン伝導性との相関を明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、π共役系モノマーとイオン液体モノマーの合成、各ホモポリマーの合成、共重合体の合成を行なった。さらに、イオン液体型ポリマーのプロトン伝導性に焦点を当て、イオン液体型ポリマー中でのプロトン伝導性を詳細に評価した。測定方法は、イオン液体型ポリマーにプロトン性のイオン液体を可塑剤として添加し、キャスト法によって高分子膜を作成した。この高分子膜を白金触媒が塗布されたカーボン電極で挟み込むことにより、燃料電池用MEA(膜/電極接合体)を作成し、窒素雰囲気下、直流測定により伝導度を測定した。その結果、作成した高分子膜の伝導度は、ほぼ絶縁体と同程度のものであった。しかしながら、水素雰囲気下にて同様に測定したところ、伝導度の増加が確認できた。水素雰囲気下にて伝導度が増加したことから、この伝導度はプロトン伝導に起因するものであると考えられ、この結果より、本材料が燃料電池への応用が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イオン液体型ポリマーのプロトン伝導度測定を行ったところ、ある条件下では、イオン液体よりもイオン液体型ポリマー電解質の方が、プロトン伝導度が高い結果を得た。これは予想とは異なる結果であり、本研究の根幹にも関わる知見である。そのため、より詳細な検討が必要となり、追加で実験を行ったためやや遅延が生じたが、全体の進捗としては大きな遅れはないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
Time-of-flight 法での電子(正孔)移動度測定と、パルス磁場勾配(PFG)NMR法を用いた各種イオンの拡散係数測定から、電子とイオンのキャリア輸送機能を個別に評価し、π共役系ーイオン液体型共重合体における、構造と電子伝導性・イオン伝導性との相関を明らかにする。 さらに、リチウムイオン電池や燃料電池用材料としての利用を目指すため、デバイス作成を行ない特性評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
①研究期間中に研究実施場所が変更になったこと。②研究計画に基づき研究を推進していたところ、当初の予想とは異なる結果が得られたため、追加で実験を行ったこと。以上2点のことから計画に遅れが生じたため、研究期間の延長を申請し承認された。そのため残予算については、次年度で使用する物品の購入、および学会発表のための旅費等に使用する予定である。
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