本研究は電子(正孔)伝導体であるπ共役系高分子とイオン伝導体であるイオン液体型高分子を精密に複合化させ、電子およびイオン伝導チャンネルが共存する混合伝導を有する新規有機材料の創成を行ない、構造と電子・イオン伝導性との相関を明らかにすることを目的とする。このような材料中において、電子・イオン伝導性や界面を制御することで、きわめて効率的な伝導性を有する新規電気デバイスの設計が可能となるため、この材料の電池電極としての可能性について検討し、二次電池や燃料電池等のエネルギーデバイスへの応用を目指した。 昨年度までは、各モノマーの合成、各ポリマーの合成を行ない、伝導性を評価した。その中で、これまでに報告のない、イオン液体型ポリマー中でのプロトン伝導が確認され、さらに、イオン液体型ポリマーをシリカ微粒子上にグラフト重合し、それを積層させて膜とした微粒子積層型電解質中では、バルクのイオン液体よりもプロトン伝導性が高いという興味深い結果が得られた。 H30年度はこれらの知見を元に、よりプロトン伝導に特化したイオン液体モノマーの分子設計、およびポリマー合成を行ない、伝導性を評価した。その結果、水素雰囲気下で、明らかなプロトン伝導が確認できた。本結果は、イオン液体型ポリマーのPEFC用電解質への応用を拓く結果であり、現在、純粋なプロトン伝導度のみを計測する手法として、直流測定を用いた測定系の確立も進めており、実用化を見据えた研究を推進中である。
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