研究課題/領域番号 |
16K13614
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田川 美穂 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (40512330)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / DNA / ナノ多結晶体 / 超格子構造 / ナノ構造物性 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、ボトムアップ手法でナノ構造を精密に制御し、ナノ構造とフォノン伝導性の関係を明らかにすることである。半導体デバイスの微細化に伴い、ナノスケールの熱制御は重要課題となっているにもかかわらず、ナノ構造を自由自在かつ精密に設計・作製する方法がなかったために、ナノスケールの熱伝導の理解は進んでいなかった。本研究では、DNAのプログラマブル自己集合の性質を利用し、配列設計をしたDNAをナノ粒子に修飾したDNA修飾ナノ粒子を、DNAハイブリダイゼーションによる結合で自己集合的に結晶化し、フォノニック結晶の前駆体となるナノ粒子超格子を作製した。申請時は、DNA修飾ナノ粒子超格子の結晶化において、マイクロサイズの大きな単結晶を作製することが技術的に困難であったため、多結晶体を作製し乾燥させて熱伝導測定を行う目的であった。しかしH28年度に、マイクロサイズで低欠損のDNA修飾ナノ粒子超格子単結晶を作製することに成功したため、H29年度も単結晶に拘って研究を進めた。H29年度の大きな成果としては、PEGの枯渇凝集効果を利用することにより、単結晶サイズを約10倍大きくすることに成功したことである。枯渇凝集効果が現れるPEGの分子量と濃度条件も特定しつつある。欠損や粒界により物性が変化することを考えると、欠損の少ない単結晶を大きく成長させる技術は物性測定において大変重要となる。またH29年度のもう一つの大きな成果は、作製したDNA修飾ナノ粒子単結晶を、対称性を維持したまま乾燥させることに成功したことである。脂質二重膜上でDNA修飾ナノ粒子の相互作用や構造形成を詳細に調べることで三次元のDNA修飾ナノ粒子超格子の構造設計へ活かし、乾燥による歪の影響を最小限に留める構造形成に成功した。これにより、物性測定のみならず、応用の観点からも利用可能性が広がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が進むにつれ、当初の目的が一筋縄には行かないことが明らかになってきたが、一方ナノ構造制御という観点、また構造の安定性という観点においては、応用を阻むこれまでの問題を上手く解決する方法を見出し、研究を発展させることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
欠損の少ないDNA修飾ナノ粒子超格子の単結晶を、これまでに実現できなかった10μm以上の大きさで成長させられる条件を発見したため、H30年度も結晶サイズの向上と枯渇効果との関係性の研究を続ける。また、結晶構造や粒子の大きさの組合せにより、成長速度や結晶性に差が出ることも発見した。プローブ顕微鏡と小角散乱測定を組み合わせて、結晶構造及び粒子の粒径比と成長速度の関係を解明する。ナノ粒子の相互作用を制御するDNAの結合力をモデル化し、結晶成長及び乾燥時の相互作用と構造変化の考察を深める。また、たんぱくの結晶化方法を模倣し、更に単結晶サイズを大きくすることに取り組み、結晶サイズの目標100μmを達成し、対称性を維持したまま乾燥して熱伝導測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度は必要な機器類を借用で済ませたり、旅費支出を抑える等して極力節約した。他の助成金による援助があったため、消耗品はそれを優先的に使用した。H30年度は条件精査など課題の特性上実験回数が増えるため(本課題の遂行に関わる学生数も増える)、消耗品(DNA、ナノ粒子、試薬、キャピラリー管、チップ・チューブ類)、シンクロトロン光における実験のための旅費が多くかかる予定である。よって次年度使用額はこれらに充てる。
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