結晶成長や化学反応といった現象は、温度や湿度、ガス、液中などの幾つかの環境要因によって、得られる結果が異なることがあるが、これをナノ~原子レベルで現象を捉えることはこれまで非常に難しいとされてきた。例えば、原子間力顕微鏡(AFM)の場合、市販の温度制御セルや密閉セルがすでに存在しているが、「温度のみ」や「ガス種のみ」といった限定的な制御による測定がほとんどあった。特に、ニーズの高い温度制御においては、試料部分だけのコントロールになるため、熱ドリフトの影響が大きく、原子レベルでの測定例は困難とされている。環境を精密に制御するには、周辺環境からの影響を低減しなければならないという観点からは、bf 装置サイズを小さくすることが必須であるが、光学系を有する従来型のAFMでは技術的に実現が難しかった。本研究では、複数の環境を制御できる周波数変調方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)を実現し、氷表面測定へ応用した。具体的には、光学系を用いない自己検出型のFM-AFMのセンサ部分や走査部分、粗動アプローチといったすべてを、密閉された密閉型小型容器に格納された装置を開発した。FM-AFMにおける探針の変位検出には、従来の光てこ方式ではなく、小型化が可能な自己検出型のセンサを用いた。ステージはPZTモーターで試料の粗動を可能として、外部からカメラで動きを観察できるようにした。温度と湿度、圧力といった複数の環境制御を行えるようにして、成長している氷表面の測定を行った。
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