本研究では,炭素源分子解離過程を制御した高品質なカーボンナノチューブ及びグラフェン選択成長実現に向けて,炭素源分子解離反応がCNT・GF生成に与える影響を明らかにすること目的としている.
平成29年度は,カーボンナノチューブ生成実験で主に使用される様々な遷移金属微粒子の触媒能を検討すべくFe,Co及びFe-Co二元合金微粒子表面上におけるエタノール解離過程の解析を行った.具体的にはスピン状態を考慮した動力学計算を1500Kにおいて実行し,エタノール解離過程の触媒毎の違いの影響につてい詳細に比較した.エタノール中のC-C結合はFeCo合金上のみで解離がみられる一方,C-O結合解離はFe触媒上で頻繁にみられるなど触媒毎に解離過程に特徴があることが分かった.さらにC-H結合解離過程についてもFe,Co,FeCo系で異なる傾向があることを見出した.Bond-overlap populationやMulliken解析およびDOSの時間変化をまとめ,これらの物理的要因を詳細に検討した.さらにHiPCOプロセスで用いられる一酸化炭素(CO)原子についても同様の解析を行い,標準的な第一原理分子動力学法解析の時間スケールの範囲においては,Fe上でのみCO解離過程が起きることを確認した.これらの結果よりエタノール解離の選択性を考慮した最適触媒の提案を行った.遷移金属微粒子の触媒能に関して得られた知見を日本金属学会で発表し当該分野研究者等と積極的な議論を行った.現在,これらの知見をまとめて査読付き論文に投稿準備中である.
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