研究課題
貴金属ナノ粒子の性質は、ナノ結晶の表面に吸着している単分子膜によって変化する。これまでに、正負に帯電した分子や光反応性の分子でナノ結晶の表面を保護することによって、整流効果や自己組織化が生じることを報告してきた。本研究では、貴金属ナノ結晶の表面に吸着する分子の吸着挙動について調べた。分子と貴金属ナノ結晶の結合は、平衡反応であり、定常的に一定量の分子が吸着しているが、吸着反応と脱着反応が平衡しており、動的な状態にあることを実験的に示した。以前に、平滑な金の上に生成するアルカンチオールの自己組織化単分子膜の構造と吸着については膨大な研究がなされてきたが、貴金属ナノ結晶においても類似の平衡反応が生じており、過去の実験事実と矛盾しない結果が得られた。また、アルカンチオールにおいては、平衡点が吸着の方向に大きく傾いており、事実上、表面が分子で安定に覆われており、貴金属ナノ粒子は安定に長期間溶媒に分散した。しかし、本実験ではアルカンチール以外にも様々な分子について検討した結果、一部の分子はわずかな環境の変化によって平衡点が大きく脱着の方向に移動し、貴金属ナノ結晶は不安定になり崩壊することをつきとめた。この性質を利用する利点は大きく、工学的な価値が高いと考えている。現在、この性質について定量的に解析を行っており、アルカンチオールをベンチマークとして、着目している分子の特異的な吸着挙動について明らかにしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに順調に成果が得られている。
今後は、分子吸着の特徴を定量的に解析して、着目している貴金属ナノ結晶と分子の結合について明らかにしていく予定である。
当該年度は詳細な実験解析よりも、有望な分子の選定を重点的に行う事になったため、次年度使用額が生じた。
当該年度の研究において今後詳しく実験解析を進める分子と貴金属ナノ結晶の系を特定したので、今後詳しい解析に必要な物品の購入等に使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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