研究課題
金属成膜技術は、現代社会に欠かすことのできない重要な技術である。成膜法には、主に、湿式めっき(電解めっきや無電解めっき)と乾式めっき(真空蒸着法など)があるが、複雑な前処理や高温/高真空を必要とすることが欠点である。本研究では、金属ナノ粒子を用い、室温で任意の物体に金属薄膜を形成する新しい成膜法の開発を行った。具体的に、これまでに報告した方法を改良し、単分散で粒径の異なる金、銀、パラジウムナノ粒子を合成した。平衡に達している金属ナノ粒子の表面に吸着している分子の重量を計測し、Sips解析を行って、脱着平衡定数を求めた。その結果、脱着平衡定数が大きく、保護分子が外部環境の僅かな変化によって脱着する、有望な反応系が複数存在することを確認した。また、吸着の強さが分子の種類によってどのように変化するか、という課題については定量的に比較された例は少なく、粒子の安定性については経験に頼っている部分が多いが、本研究では分子吸着の分子依存性やサイズ依存性についても検討した。保護分子が脱着した後の金属ナノ粒子の粒径や形状変化については、STEMなどの電子顕微鏡観察やX線回折法を用いて、その過程を詳しく調べた。その結果、保護分子が脱着した後の金属ナノ粒子は不可逆的に流動して、粗大化し、電気伝導率が10^4 S/cmの桁まで上昇することを明らかにした。今後、引き続き、金属ナノ粒子における保護分子と金属の結合の熱力学な性質について調べていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに順調に成果が得られている。
今後は、分子吸着のサイズ依存性や分子依存性について引き続き調べ、ナノスケールの物質に特異な吸着の性質について研究を行う予定である。
研究で得られた成果を鑑みて、必要な備品の購入に充てるため。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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