研究実績の概要 |
前年度合成した層状チタン酸化物H1.07Ti1.73O4H2Oおよび層状ペロブスカイト酸化物HCa2Nb3O101.5H2Oの単結晶サンプルを用いて様々な試薬の水溶液中での水和膨潤挙動について調べた。四級アルキルアンモニウムイオン(TMA, TEA, TPA, TBA)の水溶液中ではいずれも層間距離の数十倍の拡大を伴う巨大水和膨潤が観測された。その膨潤度はイオンの種類、サイズには依存せず、その濃度により支配されることが分かった。またω-アミノ酸を用いても同等な大きな膨潤が誘起されることが分かった。この場合は溶液のpHは7付近で中性であり、これまでの強塩基性試薬と比べて様々な利点が考えられる。 上記の四級アルキルアンモニウムイオンにより大きく水和膨潤させた結晶サンプルに機械的振盪を加えたところ、剥離が進行し、コロイド溶液化した。TMA, TEAで膨潤させた結晶からは横サイズが10 μm前後で、シャープなエッジを持つ大型のナノシートが得られるのに対して、TPA, TBA膨潤サンプルからはサブミクロンサイズの不定形ナノシートが得られることが分かった。この傾向は層状チタン酸化物、層状ペロブスカイトの両方に共通していた。膨潤試薬により得られるナノシートのサイズ、形状が変化することは新しい知見であり、今後のナノシートの制御合成に役立つ重要な知見になりうると考えている。 得られた酸化物ナノシートの分散ゾルは一定の条件下で液晶性を示し、アンモニウムイオン濃度を変化させることによりナノシート間隔を制御できること、強磁場を印可することでナノシートを配向できることを確認した。
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