研究課題/領域番号 |
16K13632
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
都 英次郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (70443231)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 花粉交配 / バイオミメティクス / ドローン / ミツバチ / ゲル |
研究実績の概要 |
近年、作物の受粉を担う蜜蜂の大量減少は、食糧危機に関わる世界規模の問題になっている。本研究では、効果的に花粉を吸着・媒介可能な新規材料を開発することを目的にしている。本研究は、世界規模の蜜蜂減少に対する高性能材料による安心・安全な花粉媒介を可能にする普遍的技術の基礎になる。本研究目的を達成するために、本年度は不揮発性、高粘性のイオン液体ゲルを合成し、プロトンNMR、接着性、機械的強度、粘弾性、水接触角度等の種々の物性解析を行った。また、当該イオン液体ゲルをアリやハエの体表面に成形させ、チューリップの花粉吸着量を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡により解析した。この結果、当該イオン液体ゲルを塗布した昆虫が効果的に花粉吸着することを明らかにした。さらに、静電植毛法により垂直配向させた馬体毛表面に当該イオン液体ゲルを光重合によって均一塗布することに成功した。また、本イオン液体を塗布した垂直配向型の馬体毛を飛翔ロボット(ドローン)表面に装着させ、ラジオ波でコントロールすることで、ユリ花粉の媒介挙動を蛍光顕微鏡により検証した。この結果、当該飛翔ロボットによって花粉を花から花へ媒介することに成功し、花粉稔性(花粉管成長)を蛍光顕微鏡により観察することができた。これらの研究成果は、ハイインパクトな海外一流誌(Chem)に採択され、本誌のプレビューでハイライトされたのみならず、Cell Press社によってプレスリリースされ、世界中のニュースやメディアに本研究成果が報道された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究に関わる論文が、ハイインパクトな海外一流誌(Chem)に掲載され、同紙のPreviewでハイライト、ならびにCell Press社からプレスリリースされた。この結果、世界中のマルチメディアより本研究内容が報道された。これは当初の予想を上回る成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
効果的な花粉交配を達成するために、材料の調製ならびに花粉吸着量の検証を引き続き実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリアニリンナノファイバーを動物体毛表面に高分子重合反応により垂直配向的に皮膜する予定であったが、いずれの条件においてもナノファイバーを形成させることが出来なかず時間を要したため、計画を変更し、別形状のナノ材料(球形ナノ粒子)やイオン液体ゲルを体毛表面に形成させることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
機能性繊維を調製するための試薬類[動物体毛(ブラシ)、アニリンナノファイバー合成試薬など]の調達のための経費に補填する予定である。
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