研究課題/領域番号 |
16K13634
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
山中 真也 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (30596854)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メソポーラス / コロイド / アモルファス炭酸カルシウム / 多形制御 / カルサイト / バテライト / アラゴナイト / 吸着剤 |
研究実績の概要 |
アモルファス炭酸カルシウムコロイドの相転移と自己組織化を利用したメソポーラス炭酸カルシウムの合成に関する基礎研究から、メソポーラス炭酸カルシウムを吸着剤として利用する応用研究へ展開するために、本年度は、(1)結晶多形の制御因子を抽出して、比表面積150~200 m2/gを有するカルサイト、バテライト、およびアラゴナイト型メソポーラス炭酸カルシウムを合成した。(2)得られたメソポーラス炭酸カルシウムを用いて、結晶多形(カルサイト、バテライト)が各種蒸気の吸着量に及ぼす影響を調べた。 (1)合成には、炭酸カルシウム微粒子の工業生産法である炭酸ガス化合法(水酸化カルシウムの炭酸化)を改良した方法を用いた。本法を利用すると前駆体としてアモルファス炭酸カルシウムコロイド溶液が得られる。このコロイド溶液を撹拌することで、その撹拌時間に応じてカルサイトとバテライトのメソポーラス炭酸カルシウム(比表面積は150~200 m2/g)が合成できた。これは、熟成時に系内に存在する微量の水がアモルファス炭酸カルシウムの溶解・再結晶に影響したためと推察された。また、出発原料となる水酸化カルシウムについて種々検討した結果、アラゴナイトの合成に成功した。 (2)同程度の比表面積を有するカルサイト型、およびバテライト型のメソポーラス炭酸カルシウムを用いて、結晶多形と悪臭蒸気の吸着量との関係を調べた。その結果、吸着量はバテライト型の方がカルサイト型よりも質量あたりで2倍程度多かった。さらには、バテライトの割合の増加にともない、面積当たりの吸着量が増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、アモルファス炭酸カルシウムコロイドを前駆体として、莫大な比表面積(~200 m2/g)を有するメソポーラス炭酸カルシウムの結晶多形を制御して、その吸着剤としての可能性を探索することである。初年度に計画した研究項目は、結晶多形の制御因子を抽出して、カルサイト、バテライト、およびアラゴナイト型メソポーラス炭酸カルシウムを合成することであり、研究実績の概要で述べたとおり、予定どおり進めることができた。 さらに、応用面についても検討を始めた。具体的には、得られたメソポーラス炭酸カルシウムを用いて、結晶多形が蒸気の吸着量に及ぼす影響を調べた。 以上の理由により、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画どおり、(1)本法を炭酸カルシウム以外の2族炭酸塩に適用して、メソポーラス粒子を得る汎用的なコロイドプロセスを確立する。(2)得られるメソポーラス炭酸カルシウムを用いて、結晶多形がホルムアルデヒド蒸気の吸着量に及ぼす影響を明らかにする。さらに、メソポーラス炭酸カルシウムを充填した合板用接着剤からのホルムアルデヒド放散量を調べる。 (1)メソポーラス粒子の合成:申請者の提案するメソポーラス炭酸カルシウムの合成法は、炭酸カルシウム微粒子の工業生産法である炭酸ガス化合法をベースにしている。水酸化物の炭酸化反応を利用するため、原理的には、炭酸カルシウム以外の2族炭酸塩のメソポーラス粒子も得られるはずである。本研究項目では、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムのメソポーラス粒子を合成できるかどうかを調べる。それぞれの水酸化物を用いて、炭酸化反応後に透明なコロイド溶液が得られるかを確認して、本法の適用例を炭酸カルシウム以外に拡張する。それぞれのメソポーラス粒子が得られれば、それらの比表面積、結晶構造、粒子形状等の粒子特性を調べる。 (2)メソポラース炭酸カルシウムの機能開拓:本研究項目では、カルサイト、バテライト、アラゴナイト構造のみで構成されるメソポーラス粒子のホルムアルデヒド吸着量を調べる。つづいて、接着剤樹脂に充填して作製した合板からの放散量を定量して、低ホルムアルデヒド放散(目標値:0.3 mg/L。これは、内装材として無制限に使用できる基準値)の接着剤を開発する。なお、放散量はJIS A 1460に基づき定量する。
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