本研究では、アモルファス炭酸カルシウムコロイドを前駆体として、200m2/g程度の大きな比表面積を有するメソポーラス炭酸カルシウムの結晶多形を制御して、その吸着剤としての可能性を探索することを目的とした。研究期間内には、メソポーラス炭酸カルシウムの全結晶多形(カルサイト、バテライト、アラゴナイト)の作り分けを実現した。また、高比表面積メソポーラス炭酸カルシウムの持つ大きな界面を活用して、吸着剤としての可能性を探索した。例えばホルムアルデヒド蒸気の吸着量は、バテライト型の方がカルサイト型よりも質量あたりで2倍程度多く、多形の影響が大きいことが判明した。 最終年度は、まず、提案本法を炭酸カルシウム以外の2族炭酸塩に適用して、メソポーラス粒子を得る汎用的なコロイドプロセスを検討した。その結果、炭酸カルシウムと同様にメソポーラスな粒子が得られる化合物とそうでない化合物があることが分かった。 続いて、昨年度の研究で得られたメソポーラス炭酸カルシウムについて、コロイドの凝集速度の観点から二次粒子径の制御を試みた。前駆体液中のコロイドの凝集過程(熟成プロセス)に着目し、熟成条件を種々検討して、細孔構造や多形の異なるサブミクロンからミクロンサイズの二次構造体が形成可能であることを明らかにした。とくに、一般的な凝集速度式に基づいて、凝集速度決定因子(温度、粘度、粒子濃度)をパラメータとすることで、凝集速度と二次粒子径に相関が見られサブミクロンの領域で粒子径を制御できることが分かった。 今後、炭酸カルシウムでしか発揮しない機能(用途)を見出し、グラフェン(数万円/グラム)や合成ゼオライト(数千円/キログラム)のように“グラムからキロ単位”でも需要のある高付加価値な炭酸カルシウムを合成して、機能発現の機構を追究していきたい。
|