最終年度(平成30年度)の研究実績は、インクジェット印刷により金属ナノ粒子配線を形成する技術において、基礎と応用の両面から成果を上げることができたと総括できるものであった。基礎的事項としては、インクジェットヘッドの機械的特性(ピエゾアクチュエータ)、音響的特性(インク流路)、流体的特性(インク液性)を包括的に解析できる等価回路モデルに着目し、等価回路モデル内に個々の実験系要素をうまく取り入れる方法を新たに見出したことで、より実態に合ったインクジェットヘッド解析を行うことを可能としたことが大きな成果である。応用的事項としては、独自の光焼結システムをインクジェット装置に組み込むことで、印刷と焼結を同じシステム上で一貫して行うことを可能としたことが大きな成果である。これら基礎と応用の各成果は、それぞれ論文にまとめられ、査読付き論文誌に投稿され、掲載された。 研究期間全体を通じて明らかにしたことは、インク飛翔中の直接乾燥および焼結には、想定よりも大きなエネルギー密度の光照射を行うことが必要であるということである。本研究で用いた光源のパワーは300Wであったが、それを集光させても飛翔中のインク液滴を焼結させるには不足した。この事実により、直接焼結に至るまでの一つのステップとして、印刷と焼結を同じシステム上で一貫して行うことを着想し、実現させた。さらに、大きなエネルギー密度の光照射は、インクジェットの吐出安定性を低下させるため、より安定な吐出状況の実現には、等価回路モデルによる基礎検討が不可欠であることを見出し、実行した。すなわち、研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、インクジェット技術の基礎固めを行った上で、斬新な手段で印刷と焼結を一貫して行うことであり、これらについては着実に実行され、成果を上げることができた。
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