本研究は、直径 12 nm で内部に蛍光や Au ナノ粒子を包埋させたフェリチンタンパク質に、シリコン基板上の金属配線を認識する金属結合ペプチドを修飾し、探索用、修復用、溶接用の各バイオナノ粒子を作製することで、電子ナノデバイス上の微細な金属欠陥部位を高精度で迅速に認識・修復するピンポイント探査・修復システムの構築を目指している。 本年度は、前年度に構築した化合物半導体ナノ粒子の蛍光発光をより強くするため、反応溶液中の硫化物イオンの濃度をさらに細かく制御することで、フェリチン内部空洞内に CdS 及び ZnS ナノ粒子の大量精密合成に成功した。これらのナノ粒子は蛍光分析により青色及び赤色の蛍光発光を確認している。さらに昨年度、修復用バイオナノ粒子としてフェリチン内に Au2S ナノ粒子の還元処理により Au ナノ粒子の作製済みである。それとは別に本年度は、新規の藻類フェリチンを用いることで、フェリチン内に Au ナノ粒子のワンステップ作製にも成功している。 探査あるいは修復バイオナノ粒子をデバイスの配線等に結合させるために、外表面に Au 結合ペプチドの修飾が必須であるが、QCM 測定によって当初利用する予定であった Au 結合ペプチドの結合力が若干弱い事が明らかになった。そこで本年度、急遽新規 Au 結合ペプチドの探索も行った。96 穴のプラスティックプレートを用いて数種類の候補ペプチドのミネラリゼーション能力を検討した結果、 従来より 2 倍以上の結合力を持つペプチドの取得に成功した。さらに遺伝子工学的手法により、本 Au 結合ペプチドをフェリチン外表面に修飾した Au 結合フェリチンの大量生産にも成功している。現在は Au 結合ペプチドの結合メカニズムを解明しながら、実際のシリコン基板上の金属配線に結合し剥離するかを検討中である。
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