本研究は、低融点金属のナノ粒子を高分子マトリックス中にて直接合成し、ナノ粒子サイズの精密制御を行うとともに、サイズ-融解温度―融解潜熱の相関を明らかにし、ナノコンポジット蓄熱材料の新しい材料設計指針を提案することを目的としている。最終年度である平成29年度は、ポリイミド樹脂改質層中にビスマス (Ⅲ)イオンを吸着したポリイミド樹脂を水素気流中にて熱処理を行い、金属イオンを還元し、ビスマスナノ粒子を作製した。断面TEM観察の結果、ビスマスナノ粒子が形成し、加熱温度によりナノ粒子サイズを精密に制御可能であることがわかった。これは、ビスマスの融点よりも高い温度で熱処理を行うため、ビスマスが液相状態を経てからナノ粒子を形成し、球状で単分散なビスマスナノ粒子を形成したと考えられる。得られたビスマスナノ粒子分散高分子薄膜の熱特性をDSC測定にて評価したところ、バルクの融点(271.4℃)と比べて低下していることが明らかとなった。これは、金属ナノ粒子の体積サイズ効果によって引き起こされた融点降下であり、粒子サイズが小さくなるほど融点が低下していることが明らかとなった。以上の結果より、ポリイミドフィルムに金属イオンを吸着させ、水素還元によるin situプロセスにて金属ナノ粒子分散高分子薄膜を作製するといったシンプルな手法で、金属ナノ粒子のサイズ制御が可能であり、融点を100℃の範囲で制御可能であることが分かった。 以上の結果より、本手法は金属ナノ粒子を蓄熱材とした新規蓄熱材料の作製において有用であることが示された。
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