平成28年度までに、LZMW(ナノトラック)幅の最適化、微小管-キネシンアッセイ系構築を実施した。そこで、平成29年度は、固定した微小管上を動くQ-dotキネシン(Q-dot 525)の評価を実施した。観察にはQ-dotおよびATPの励起に必要なレーザー2本を光源として用い、得られた蛍光は工学系により分割してEMCCDカメラにより撮影した。また、得られたQ-dotキネシンとATPの像を一致させ空間分解能を向上させるため、Tetraspeckビーズを用いたキャリブレーションをおこなった。その結果、幅150 nmのLZMWにおいてQ-dotキネシンとATPの同時観察が可能であり、キネシンに結合するATPを観察することができた。従来のTIRFMによる観察で可能なATP濃度のおよそ10倍の濃度で、1分子蛍光観察が可能になった。 さらに、これまでに構築したアッセイ系とは逆に、微小管運動中に結合してくるATPについても評価を実施した。まず始めに、非蛍光ATP、蛍光ATPを用いてフローセルやLZMWにおいて微小管の運動速度を計測した。ATP濃度依存的に運動速度が上昇することが示され、蛍光ラベルによってその速度が低下することも示された。さらに、GFPラベルしたキネシンを用いることで、微小管の運動に応じてATPがキネシンに特異的に結合する様子も観察することができた。このATPがLZMW内で観察される時間を評価することで、ATPが非特異的にガラスに結合しているのではなく、キネシンあるいは微小管の存在に応じて結合解離を繰り返していることがわかった。
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