研究課題/領域番号 |
16K13646
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤原 正澄 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (30540190)
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研究分担者 |
湯川 博 名古屋大学, 工学研究科, 特任講師 (30634646)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ光デバイス / ラマン散乱 / 一細胞解析 |
研究実績の概要 |
本研究は幹細胞の分化やがん化などに繋がる細胞の動態をリアルタイムで安定的かつ超高感度にプローブ可能な、ナノ光ファイバニードル型超高感度ラマン散乱計測技術を開発する。先鋭化した光ファイバ先端からラマン散乱を観測する光ファイバ検出法は開発されてきたが、検出効率は顕微鏡ラマン測定より大幅に低く、実用的ではなかった。本研究では、申請者らが独自に開発したナノデバイスであるナノ光ファイバを、ニードル形状に加工して利用し、従来型ファイバラマン検出を凌駕する感度を実現する。これを幹細胞に挿入し、細胞内でのラマン信号を超高感度に検出する。本提案は、臓器内の単一細胞診断などの革新的バイオ医療分析手法につながるセンシング手法である。 今年度は、①細胞挿入に必要な剛性と透過率を有するナノ光ファイバ実現のために、数値解析によるデバイス設計と試作を行った。②細胞への蛍光性ナノダイヤモンドの導入について試験的な取り組みを行った。 ①に関しては、細胞挿入に必要な剛性を実現するために可動型酸水素バーナーの導入を行った。このために、バーナー関連装置の購入を行った。また、バーナー形状に関して論文資料・技術資料の調査、および設計を行った。バーナーシステムの構築は現在進行中であるが、バーナー部の設計は安全面も含めて慎重に設計する必要があり、時間を若干要している。また、年度途中に異動した事により、実験室の高圧ガス規定環境が変化したため水素ガスボンベではなく、ガスクロ用の水素発生器を応用して試行中である。 ②に関しては、細胞内のラマン散乱計測以外にも、細胞内(将来的には生体組織)への蛍光プローブ導入を行い、その蛍光計測を行う応用手法も有望との結論に達し、試行的に蛍光性ナノダイヤモンドを細胞に導入させる試みを行った。その結果、細胞内に蛍光性ナノダイヤモンドを入れる事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標であった、可動型酸水素バーナーの導入に関しては、70%程度の達成を行ったと考えている。100%とならなかった理由として、代表者の研究機関異動に伴うガスバーナー使用環境の変化があり、酸水素バーナーの稼働が遅れ気味な点があげられる。一方で、細胞内への蛍光性ダイヤモンドナノ粒子への導入に関しては代表者と分担者の頻繁な議論の結果生れたアイデアであり、実際に細胞内への導入を実現したところは予期せぬ進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、細胞挿入に必要な剛性と透過率を有するナノ光ファイバを実現するべくナノ光ファイバ作製装置の構築完了と条件出しを行う。既に必要な装置は準備され、システム構築も現在進行中である。条件出しを行って、剛性の強い片端ナノ光ファイバを実現した後に、細胞への挿入を行う。細胞への挿入は既存設備の3軸ピエゾステージを使って自作のマイクロマニピュレータを準備して行う。マイクロマニピュレータに関してはこれまでにも自作してナノ粒子のマニピュレーションを実現しており、まったく問題ない。細胞培養に関しては、研究分担者の方で担い、簡易型の細胞容器で運んだ後、挿入実験を行う予定である。ラマン散乱測定に関しては、既存設備の1040nm近傍の外部共振器型半導体レーザーを利用する。 また、今年度思わぬ進展のあった、細胞への蛍光性ナノダイヤモンドの導入に関して、細胞内でのより均一なナノ粒子の分散を実現する。エンドサイトーシスによって細胞内に含まれていると考えられ、導入時間やナノ粒子の濃度、また、表面処理によって対応する。 また、次年度も代表者と分担者が頻繁な研究交流を重ねて共同研究成果を創出する。成果発表に関しても、次年度は関連学会での発表を行う予定である。剛性の高いナノ光ファイバの実現、および、細胞内へのダイヤモンドナノ粒子の導入に関する実験それぞれに関して論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り越しが生じた理由として、当初計画していたガス関連器具の購入を見送った事があげられる。これは代表者の異動に伴う研究環境の変化(法令・規定等)で、新実験室にあわせた配管を再設計する必要が生じた。また、ラマン散乱測定用に近赤外レーザーの購入を予定していたが、必要なレーザー出力を精査した結果、既存の波長可変レーザーでまかなえる事が判明したため、購入を見送った事があげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、新実験室でのガス関連設備(配管やレギュレータ)の購入品に使用する(消耗品)。また、ナノ光ファイバの原料としての光ファイバの購入を行う。細胞にダイヤモンドナノ粒子を導入して分散状況を観察する過程において必要な染色用の蛍光色素の購入に使用予定である。
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