研究課題/領域番号 |
16K13650
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90372458)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノマシン / 先端機能デバイス / マイクロ・ナノデバイス / 熱工学 |
研究実績の概要 |
サスペンデッド状態にした大面積CVDグラフェン薄膜上に、収束ヘリウムイオンビームを用いて2次元ナノ孔アレイを形成する方法でグラフェンフォノニック結晶構造を作製した。ナノ孔の直径および孔の間隔を縮小するために、ヘリウムイオンビームのドーズ量とビームピッチの最適化を行った結果、ナノ孔の直径3~4nm、ナノ孔間隔(孔の中心間隔)9nmと、孔寸法・間隔ともにシングルナノメータレベルで加工することに成功した。さらに、このナノ孔アレイを介した電気伝導特性の温度依存性を測定し、室温で十分な電流密度が得られること、および低温でトランスポートギャップが増大することを見出した。このことは、形成したナノ孔の周辺に点欠陥領域が形成され、実効的なナノ孔間隔を狭めていることを示唆している。さらに、CVDグラフェン膜中の結晶粒界、あるいは表面残留不純物などに起因すると考えられる局所的な孔不形成が生じるケースが見つかり、今後の歩留まり改善に向けたグラフェン膜の均一性向上の課題も見つかった。 また、幅の異なる極細グラフェンナノリボン(GNR)のヘテロ接合構造に対して、非平衡分子動力学(NEMD)による解析を行い、熱バイアスの極性の切り替えによって、ヘテロ接合付近でフォノン局在分布に顕著な変化が現れ、熱整流作用が生じることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収束ヘリウムイオンビームによるグラフェンフォノニック結晶構造作製、および非平衡分子動力学(NEMD)を基づく大規模シミュレーションによるグラフェンフォノニックヘテロ接合構造/熱整流素子の設計・解析、ともに、ほぼ当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度に構築したシングルナノメータ孔アレイ形成技術を駆使して、コヒーレント熱フォノンに対して作用するグラフェンフォノニック結晶構造と、粒子的性質の熱フォノンに対して有効なフォノンブロッカーを、2本の平行サスペンデッドグラフェンナノリボン(熱電対)上に集積化した新奇ナノゼーベック素子を試作する。グラフェンのアンビポーラ特性を利用して、2つのトップゲートの電圧の極性を逆に設定し、熱電対チャネルの電子と正孔キャリア密度をそれぞれのゲート電極で変調する。試作した素子の特性評価においては、ナノスケール・拡張3ω法による熱電変換特性評価を行う。また、グラフェンフォノンへテロ接合構造をベースとした熱整流素子基本構造を作製する。ヘテロ構造チャネルを流れる熱流コンダクタンスと両端に加える熱バイアスの相関、およびその熱バイアス極性依存性を測定して、熱整流効率を評価する。
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