研究課題/領域番号 |
16K13651
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
神谷 庄司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00204628)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / フレキシブルエレクトロニクス / 曲げ試験 / その場観察 |
研究実績の概要 |
フレキシブルエレクトロニクスの分野では、従来のフレキシブルプリント基板のような配線基板部だけでなく、トランジスタなど素子部も形状変化に富む用途に製作されつつある。その形状変化に富む特徴を活かして屈曲変形を伴った利用環境が想定されるが、屈曲変形に強い実用性のある素子を設計・製作するためには、その機能を損なう変形の限界点を知ること、素子の破損を抑止するための損傷防止技術の開発が必要不可欠である。 初年度は、有機薄膜トランジスタデバイスに対して電気・機械特性を評価しながら完全に折り曲げることが可能な曲げ試験システムを構築し、そのトランジスタ特性を損なう限界点の評価を行った。また最終年度に損傷防止技術を構築するための要となる応力発光体について業者と打ち合わせ製品を選定・納入した。以下の研究成果を得た。 曲げ試験機で有機薄膜トランジスタデバイスを屈曲させ、レーザー変位計による表面形状形を計測し、デバイスの半導体領域ではほぼ一様な曲率の変形状態になることを確認した。また本試験評価によってトランジスタとして機能を完全に停止する限界点を見出すことに成功した。さらに、一様梁の曲げモデルを用いて半導体部の表面ひずみを見積もったところ、ON電流値がひずみに対して直線的に低下していく傾向を確認した。トランジスタの機能を損なったデバイスをSEM観察し、デバイスの故障は有機半導体層の損傷に起因したものであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に計画とした電子顕微鏡内曲げ試験の実施に遅延が生じている。有機トランジスタの電気特性の測定に関して当初予期していなかった問題が生じており、この問題解決に時間を要した。本研究では曲げ試験を実施しながらIV特性を計測する必要があり、素子の曲げ変形過程におけるコンタクトプローブの位置ずれやノイズ問題により素子のI-V特性が安定して評価できない問題が生じた。現在、コンタクトプローブの仕様を変更したことで、ほぼ安定した電気計測が行える状態まで改善できており、電子顕微鏡内曲げ試験を早急にキャッチアップしたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は電子顕微鏡内曲げ試験および応力発光体を用いた曲げに対する損傷防止技術の開発に取り組む。電子顕微鏡内による曲げ試験では、素子の変形過程を連続観察することで損傷過程や故障原因を明らかにする。また応力発光体をフレキシブルデバイスへ実装し、発光強度とフレキシブルデバイスの曲げによるひずみを対応づけることで、損傷防止技術の構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」で述べた通り、有機トランジスタのIV特性の計測に関して、電極へのコンタクト方法、ノイズ、光起電力効果等、当初予期していなかった事態が起こっている。このため、当初申請していたプローバーステーションの購入について再検討を行い、機器の購入を一時見合わせたことによって次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
電極へのコンタクト方法に関しては、電極と配線の固定治具を工夫することで有機トランジスタ素子の計測精度の向上に成功したが、ノイズ問題や光起電力効果に対する影響が素子の計測にとって無視できるレベルではなく、これらの問題解決策を必要としている。そこで次年度使用額をシールドボックスの費用へ充当することで、ノイズと光起電力効果に対する対策を講じる。
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