研究課題/領域番号 |
16K13653
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
許 岩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90593898)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3Dナノ空間ケージ効果 / ナノ粒子 / アレイ化 / Nano-in-Nano集積化 / ナノチャネル |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が発見した開放的3Dナノ空間に存在する新規ケージ効果(=3Dナノ空間ケージ効果)を、空間内にトラップされたナノ粒子のダイナミック挙動及び空間壁面との相互作用の解析により解明し、この新規ケージ効果に基づいて液相中ナノ粒子の高秩序化させるナノ流体やナノ空間構造などの条件を独創的な実験系で明らかにすることによって、液相中ナノ粒子の1粒子精度、長時間安定なアレイ化を世界に先駆けて実現することを目指している。3Dナノ空間ケージ効果の解明は、量子サイズ効果からマクロな力学へと移行する過渡的空間の特異性原理を初めて3Dナノ空間へと発展させる学術的意義がある。また、ナノ粒子のアレイ化が実現できれば、ナノ粒子の時空的精密制御を初めて可能となり、ナノ粒子とその特性を利用する幅広い科学分野へ波及効果は極めて大きいと確信する。 平成28年度は、本研究の基礎となる開放的3D ナノ空間ケージ効果の解明に重点的に取り組んだ。具体的には、3Dナノ空間におけるナノ粒子の運動を追跡できる提案として高感度ハイスビード蛍光イメージング手法を確立した。この手法を用いて、ナノ粒子、3Dナノ空間及び分散相の様々な因子を調整しながら、3D ナノ空間内ナノ粒子のダイナミック挙動を解析した。この解析を通じて、3D ナノ空間ケージ効果に関わる自由エネルギーによる保存力の効果や、粘度などの散逸的な効果及びCoulomb 的な効果を識別し、その支配度を初めて明らかにした。これにより、開放的3D ナノ空間に存在する新規ケージ効果のメカニズム解明に近づき、過渡的ナノ空間の特異性原理の大きな発展にもつながったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、研究実績の概要で述べたように、提案した高感度ハイスビード蛍光イメージング手法を確立した上で、この手法を用いて3Dナノ空間内にトラップされたナノ粒子のダイナミック挙動及び空間壁面との相互作用を解析することができた。これにより3D ナノ空間ケージ効果に関わる各力学効果の支配度を明らかにすることができた。当初の目的はほぼ達成したと言える。 しかし、実験中ナノ粒子によるナノ流路の詰まりが問題として見つかった。詰まりは粒子のアレイ化に影響すると考えられ、本研究の最終目標をより早く実現するため、上述の当初の計画を推進しながら、ナノ流路詰まりの解消にも取り組んだ。そこで、ナノ流路構造の最適化、ナノ流路の修飾、粒子がナノ流路に入る前の流線制御、詰まった後の粒子ブラウン運動の促進などの方法を提案して、流路詰まりの解消実験を行った。ナノ流路詰まりの解消はまだ完全に解決できていないものの、これらの試みにより、ナノ流路詰まりの解消の糸口を見出した。これは、平成29年度の研究実施計画の推進にとても役に立つと考えられる。 以上に基づいて、平成28年度は、当初計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度の成果から得られた知見に基づいて、確立した高感度ハイスビード蛍光イメージング手法を用いて、環境温度と3D ナノ空間内ナノ粒子のダイナミック挙動の関係を解析する。これにより、3D ナノ空間のブラウン運動の抑制効果をさらに明らかにし、開放的3D ナノ空間ケージ効果のメカニズムをさらに解明する。また、3D ナノ空間ケージ効果のメカニズム解明により明らかにしたナノ粒子長時間トラップの最適化ケージ効果条件を用いて、nano-in-nano構造や、ナノ粒子及びナノ流体のパラメーターの検討実験を行い、ナノウェルのナノ粒子トラップ率(=粒子ありナノウェル数/全ナノウェル数, %)の各種パラメーター依存性を検討する。これにより、液相中ナノ粒子の1粒子精度、長時間安定なアレイ化が達成すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者(大学院生)が10/9-10/13開催の国際学会「MicroTAS」に参加する予定だったが、未参加のため、その学会参加費の予算が残った。また、ナノ粒子販売会社との交渉で販売価格の値引きをしてくれたため、部品費の一部予算が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度プロジェクトを推進するための実験用装置、消耗品・試薬・基板などの購入費用等に使用する予定である。
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