研究課題/領域番号 |
16K13655
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミクロ直流モータ / 直流ポンプ / 非線形発振 / limit cycle / 分岐現象 / 無接点モータ / 化学-機械エネルギー変換 / 光振り子 |
研究実績の概要 |
本年度は、自律運動系の中でも、cmスケールの液滴の自発運動に関する研究が大きく進展した。具体的には、生物が示す走化性に注目して、ガスに対して同様の振る舞いを見せる液滴系を発見した。酸性であるオレイン酸のcmサイズの液滴に塩基性のアンモニアをガス刺激として与えると液滴はガス刺激から逃げる方向に運動した(負の走化性)。オレイン酸とアンモニアの間で生じる酸塩基反応でオレイン酸がイオン化されることで界面活性を示し、界面張力が場所特異的に変化することで生じるマランゴニ流により運動が誘起されていると考えられる。また、塩基性のアニリン液滴と酸性の塩酸ガスによる系において液滴はガスに引き付けられる方向に運動した(正の走化性)。生物の走化性を模倣するモデル系としてガス刺激を感知して運動する液滴が明らかとなった。更に別の研究成果として、水面に浮かべられたアニリンの液滴が自発的な拍動を示す現象を見出し、理論的な解析も行った。単一のアニリン液滴が拍動することだけでなく、複数の液滴が同期して拍動すること発見。心筋細胞などの生物に見られる動的な同調現象と類似した現象であることから、生命体での自律的な振動現象の本質を追究する上でも、興味ある実験結果。運動の同調のメカニズムについても物理的なモデルを援用した議論を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者らの研究により、走化性を示す油滴を創り出すことに成功し、その物理科学的なメカニズムについても解明することができた。また、水面に浮かぶ複数の油滴が自律的な集団運動を行い、まるで、心筋細胞が自発的に同調するのと極めて類似した現象を見出した。これについても理論的な解明を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1)「光照射による物体運動制御・流体ポンプ」:金属薄膜から、適当な形状を切り出し、液面上に浮遊した状態で、局所的にレーザーを照射すると、振り子運動が生じることが明らかになりつつある。この方向の研究を推進する。更には、自律的な自転運動をする現象についての研究も発展させたい。 2)細胞の時空間の自己組織化のモデルについても、重点的に研究を展開する予定である。具体的には、振動場での自律的な集団運動や、高分子のミクロ相分離系を活用した、細胞サイズ液滴の自発的生成と細胞様機能の創出などを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
液滴の運動系、およびレーザ誘起運動系の予備的な研究が本年度予想外に進展し、次年度は研究の発展のために、消耗品などが必要である。更には、論文発表をOpen Accessにする予定であり、次年度複数の論文の出版を予定している。
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