本研究では、その輝度向上によって原子・電子配置から、電子運動量密度、フォノン分散、スピン状態、原子核配置など観測対象が広がり続けている放射光X線散乱を対象に、観測から有限温度における物質の機能予測・設計をかのうとするが来る構築を回折法による電子密度分布に基礎を置いて構築することを目的に進めている。 研究開始の昨年度よりSPring-8において37KeVのこれまでの装置の限界を超えた高エネルギーX線回折データを測定する方法を基盤化した。この手法にて、ダイヤモンドと単体金属を試料として30Kから800Kの範囲で回折データを測定することで、弾性散乱であるBragg散乱、熱散漫散乱を精密に計測することに成功した。電子密度解析については、世界最高の精度・確度での解析が行えたと判断し、2017年8月に分野でもっとも権威のある国際結晶学連合の会合にて発表した。特に、ダイヤモンドの高分解能データの報告は30分の口頭講演に採択された。 熱散漫散乱の解析については、単体金属をbaseに解析を進めた。最終的にフォノンの分散寒けとの関連づけまで解析が進められたのは、アルミニウムであった。アルミニウムに置いては30Kから室温に至る熱散漫散乱の変化を明らかにし、それを解析することにも成功した。 コンプトン散乱については、理論を学びつつ、散乱を計算可能な第一原理計算ソフトウェアを納入して解析を始めたところである。熱散漫散乱だけでも他温度の精密データからこれまで引き出せなかった情報が引き出せたため、コンプトン散乱も今後の解析結果に期待してくる。
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