研究課題/領域番号 |
16K13662
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
馬場 暁 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80452077)
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研究分担者 |
L CHUTIPARN 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90769316)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / グレーティング / フレキシブル / センサー |
研究実績の概要 |
本研究では、フレキシブルグレーティング基板上で白色光照射表面プラズモンを共鳴励起させ、共鳴状態からの輻射光を検出するセンシングシステムの構築を目指す。これは、物質の吸着による表面プラズモン共鳴励起輻射光波長の変化をセンシングするもので、小型化・多機能化が可能なフレキシブルプラズモニックセンサーシートの開発に向けて基礎・応用研究を行うことを目的としている。 今年度は、フレキシブルプラズモニックシート開発のために必要である、曲げ伸ばしを行った時の表面プズモン励起特性を明らかにするために、金属格子を直接伸縮可能なポリジメキルシロキサン(PDMS)基板上に作製し、PDMS基板を伸縮することで格子間隔を制御し、透過型表面プラズモン共鳴励起による裏側からの輻射光波長の特性について検討を行った。その結果、基板の伸縮に伴う格子間隔の変化により、100nm程度もの波長域で1 nm以下の精度で表面プラズモン励起波長を制御することが可能となった。 また、PDMSで作製したマイクロ流路と組み合わせた表面プラズモン励起波長のイメージング測定では、流路ごとに屈折率を変化させた溶液を用いることで屈折率変化に対するPDMSマイクロ流路デバイス-透過型表面プラズモンイメージングの感度の評価も行った。この時、スマートフォンを検出器として用いた場合の測定も行った。さらに、バイオセンサーへの応用として銀微粒子-クレアチニンの凝集を利用したクレアチニン検出も行った。この時、クレアチニンの濃度変化により銀微粒子の凝集状態が変化し、局在プラズモン励起波長が変化することでセンシング感度を向上することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、フレキシブルプラズモニックセンサーシートの開発に関する内容であり、一年目で プラズモニックシートの曲げによる透過型表面プラズモン共鳴励起の特性についての知見を得ており、二年目ではさらに進んでプラズモニックシートの伸縮による透過型表面プラズモン共鳴特性について明らかにして、表面プラズモン励起波長の制御が可能となった。さらに、このフレキシブルプラズモニックシートをマイクロ流路と組み合わせた透過型表面プラズモン共鳴イメージングの測定やスマートフォンでの検出まで進めて、初期データを得ることができた。 以上のように、フレキシブルプラズモニックセンサーシートの開発に関する成果が得られており、概ね当初の計画通り達成できた。これらの結果は、すでに学会での報告や論文での発表なども行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はこれまでに得られた研究をさらにすすめ、透過型プラズモニック圧力センサーやプラズモニックシートセンサーシートの開発を進める。また、計画通りスマートフォンにセンシング部を取り付け・取り外しが可能なフレキシブルプラズモニックシート/スマートフォン一体型システムの構築に向けた研究も進める。プラモニックシートは前年度までと同様にPDMSを用いることで、簡便にスマートフォン上に貼り付けてセンシングできるようにする。センサーの実験としては、インプリンテッド格子/金属薄膜/導電性高分子/プローブ分子の系において、環境物質や生体分子が吸着した時の誘電率変化によるプラズモン励起輻射光波長の変化を検出する。また、導電性高分子薄膜をパターン化することで、検出する生体分子の種類によって、出てくる光の波長が異なるようなフレキシブル多項目同時検出型のセンサーの構築も試みる。 また、得られた成果は国内・国外の学会で報告を行うことにより公表し、国際論文誌での誌上発表も積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 3月に物品(光学部品等)を購入したが、支払いが4月になったため残額が生じた。 (使用計画) 平成30年度は概ね当初の計画通りに研究費を使用する。消耗品としては、種々の構造の有機薄膜、格子構造を作製するために必要な物を挙げている。ナノインプリントによるナノ形状最適化のために、格子間隔の異なるナノピラーやナノドット、ナノウェルなど種々のナノ形状のテンプレートも購入する。基板洗浄用の有機溶媒や有機分子、薄膜表面評価のためのAFM測定用のカンチレバーなども使用する。また旅費としては、情報収集や得られた成果の発表を行うために、応用物理学会、電気学会、さらに有機エレクトロニクスに関する国際会議に参加する。他には、実験補助としての謝金や、その他学会参加費、論文投稿料などとしても研究費を使用する。
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