研究課題
一硫化サマリウムSmSの4f電子数と体積の相関学理を解明し、新しい巨大負熱膨張材料や電場駆動アクチュエータ材料を創製することを目的として、下記の課題に取り組み、成果を得た。(1)低温合成法によるSm1-xMxS(M:希土類等)の負熱膨張特性最適化:900~1000℃程度と、従来法(2000℃以上)に比べて低温の固相反応法により、Sm1-xYxSを中心として、巨大な負熱膨張を示す焼結体試料を得ることに成功した。メカニカル・アロイングの手法を取り入れることで、SmとYの固溶が促進されたことが原因と考えられる。様々な希土類元素の固溶にも取り組み、過去の報告よりも高温(~500 K)から負熱膨張が始まる試料を得ることにも成功した。(2)Sm1-xYxS高品位単結晶の育成と負熱膨張特性評価:高周波誘導加熱炉とタングステンるつぼを用いた従来法によるSm1-xYxS高品位単結晶を作製し、負熱膨張の詳細なY組成依存性を明らかにした。また、体積変化総量が4%を超える巨大な負熱膨張を実現した。これは、等方的負熱膨張物質としてはこれまでの報告で最も大きい負熱膨張である。この負熱膨張は等方的であり、繰り返される熱履歴に対して、歪が入りにくく、機能が安定する点で工業的に有利である。エポキシ樹脂やアルミニウムとの複合化にも取り組み、Sm1-xYxSの熱膨張抑制能力を検証した。(3)電場による体積制御:将来的な電場駆動アクチュエータ材料への活用を見据えて、最初のステップとして、非線形伝導現象の観測を行った。その結果、室温において顕著な非線形伝導現象を確認した。これは電場によって金属相へ転移したことを示唆するものである。
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Applied Physics Express
巻: 10 ページ: 204701
10.7567/APEX.10.115501