本年度は、酸素欠損の規則配列を有するブラウンミレライト構造を有する鉄酸化物SrFeO2.5のエピタキシャル薄膜に着目し、薄膜の酸化還元反応に伴う酸素配位環境(酸素量)変化によって有される構造および伝導特性の評価を行った。特に、酸化還元反応に伴う変化は局所的に起こると考えられるので、走査プローブ顕微鏡を用いた特性評価に注力した。試料は、パルスレーザー堆積法でSrFeO2.5をエピタキシャル成長させることで作製した。また作製した薄膜を様々な環境でポストアニールすることで、薄膜中の酸素配位環境を変調した。X線構造評価からは、薄膜の酸化反応にともなって、薄膜の構造がブラウンミレライト構造からペロブスカイト構造へと変化することを確認した。その一方で走査プローブ顕微鏡観察からは薄膜中に流れる電流は空間依存性を示すことを見出した。この結果は、酸化反応に伴う構造変化が局所的に発生していることを意味するものである。また、プローブ顕微鏡を用いた電流マッピングの詳細な解析から、試料表面におけるテラスのステップエッジに近い局所領域においてのみ、構造変化に伴う局所電流が増大することを見出した。このことから、酸化反応において酸化物イオンは表面の局所領域から優先的に薄膜中に取り込まれ、そして薄膜中へと拡散するということが明らかになった。これは酸化物中の酸化物イオンダイナミクスを理解する上で重要な知見であると考えている。本研究成果に関しては、現在論文投稿準備中である。
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