研究課題
本研究では,バンドギャップを7 eVの酸化アルミニウムガリウム混晶に対して,不純物ドーピングにより自由キャリアの生成を試みる.もしキャリアの発現が確認できれば,現在最大のバンドギャップ6.3 eVを持つ窒化アルミ半導体を超える究極の半導体となり,半導体材料開発分野に対して大きなインパクトを与える.本年度は,まずプラズマ分子線エピタキシー法により,不純物ドーピングの前段階である酸化アルミニウムガリウム混晶薄膜の作製を試みた.このとき当初の計画であったバンドギャップの制御上限が大きな準安定コランダム型だけでなく,準安定スピネル型についても作製を試みた.コランダム型については,酸化アルミニウムガリウム混晶薄膜を,同じ結晶構造を持つサファイア基板上に直接作製させようと試みた.しかしながら,Al組成の大きな混晶薄膜であっても熱力学的に安定なベータガリア型構造に相転移することを確認した.一方で,スピネル基板を用いて欠陥スピネル構造を持つ酸化アルミニウムガリウム混晶薄膜の作製を試みたところ,全組成範囲で高結晶性薄膜の作製に成功した.これらの混晶薄膜の結晶性は,報告されているコランダム型の混晶薄膜と比較して良好であった.バンドギャップについても約7eVまで拡大できることを確認した.これは,当初予想しえなかった全く新しい発見であり,数少ない全率固溶可能な酸化ガリウム系混晶系として,今後の展開が期待できる.
3: やや遅れている
異動に係る設備立ち上げに時間を要したため実験開始が遅れた.また,分子線エピタキシー法によるAlGaO薄膜の成長において,コランダム型が安定して作製できなかった.
研究実績の概要で記載したとおり,分子線エピタキシー法では,コランダム型の酸化アルミニウムガリウム混晶薄膜がサファイア基板上に安定化できなかった.そこで,今後はまず実績のあるミストCVD法で,コランダム型酸化ガリウムを作製し,そのバッファ層上にバンドギャップ7 eVのコランダム型の酸化アルミニウムガリウム混晶薄膜作製を分子線エピタキシー法で試みる.実現できれば不純物ドーピングも行い電気伝導性の発現を目指す.一方,高結晶性の欠陥スピネル型酸化アルミニウムガリウム混晶薄膜(最大バンドギャップ約7eV)が分子線エピタキシー法により作製できることが,本研究期間中に明らかになった.そこで,コランダム型だけでなく,欠陥スピネル型でも6 eV強の薄膜を作製し電気伝導性の発現を目指すという可能性も検討したい.
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Applied Physics Express
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巻: 10 ページ: 035701
10.7567/APEX.10.035701
Japanese Journal of Applied Physics Selected Topics in Applied Physics
巻: 55 ページ: 1202B7
10.7567/JJAP.55.1202B7
巻: 55 ページ: 1202B6
10.7567/JJAP.55.1202B6