研究課題/領域番号 |
16K13676
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
重川 直輝 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (60583698)
|
研究分担者 |
嘉数 誠 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50393731)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ダイヤモンド単結晶 / 常温接合 / 表面活性化接合 / EELS / XPS |
研究実績の概要 |
表面活性化法による常温接合を用いて作製したダイヤモンド単結晶/シリコン基板接合において、接合界面を断面TEM及び付随する電子エネルギー損失分光(EELS)分析を用いて評価した。断面TEMにより、接合界面に転位は発生していないこと、また、ダイヤモンドに厚さ15 nm程度の変質相が存在することがわかった。EELS分析によりπ軌道とσ軌道の強度比の場所依存性を評価し、ダイヤモンド単結晶の十分内側と比較して、変質相中のπ軌道の強度が大きいという結果を得た。更に表面活性化処理前後のダイヤモンド単結晶表面のXPS分析を行い、表面活性化時のアルゴン原子ビーム照射により、sp2軌道の強度(sp3軌道の強度に対する相対比)が増加することを見出した。これらにより、接合界面付近のダイヤモンド側に形成されている変質相はグラファイトとダイヤモンドの中間状態ないしはアモルファスの状態にあると考えられる。このような変化は、アルゴン原子ビーム照射によるエネルギー輸送の結果、ダイヤモンド単結晶/シリコン基板界面に新たな物質相が形成されている可能性を示す。応用の観点からは変質相の形成が強固な接合界面形成に重要な役割を果たしていると思われる。これらの結果について、学会発表1件(2016年秋季応用物理学会)、論文発表1件(Applied Physics Letters誌2017年3月に掲載)を行った。更に、本構造の応用開拓、デバイス作製に向けてエピ結晶成長済みのダイヤモンド単結晶/シリコン基板接合を形成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては、ダイヤモンド単結晶/シリコン基板接合の基礎(接合界面の結晶構造解明、新物質相の実現)、応用(シリコン基板上ダイヤモンド単結晶デバイスの形成)の両側面において着実な結果が得られている。基礎的な側面の結果について学会発表1件、論文発表1件を行い、着実に成果を発信している。
|
今後の研究の推進方策 |
基礎と応用の両面から、ダイヤモンド単結晶/シリコン基板接合の研究を進める。一部の研究は研究協力者である大阪市立大学・梁講師がイギリス・ブリストル大学のKuball教授のグループに滞在し、同教授と連携して行う。 (基礎的な側面) 作製ずみのダイヤモンド単結晶/シリコン基板接合の耐熱性を評価する。熱処理後の接合界面の原子配置を断面TEMやEELS等の手法を用いて評価し、ダイヤモンド単結晶とシリコンの境界相に対する熱処理の効果を明らかにする。 (応用的な側面) 以下の研究を通じて、ダイヤモンド単結晶/シリコン接合の応用可能性を探索する。(1)シリコン基板に接合されているダイヤモンド単結晶でデバイスを作製し特性を実証する。(2)エピ成長温度に耐える接合を作製し、接合された状態のダイヤモンド単結晶表面上にデバイス用のエピ層を結晶成長する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度においては、断面TEM用試料作成条件の最適化に時間を要したため、当初予定の回数のTEM観察を行うに至らなかった。それに代わる評価手段として学内装置によるダイヤモンド単結晶表面のXPS分析を行い、当初計画通り、接合表面・界面に関する学術的な知見を得ることができた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は接合界面構造の接合後の熱処理温度依存性を体系的に評価する。そのために事前に計画以上の回数のTEM観察を行う。今年度残額はその費用に充当する。
|