• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

Ge(110)表面における単一配向極薄Geナノワイヤーの創製と応用開拓

研究課題

研究課題/領域番号 16K13678
研究機関筑波大学

研究代表者

山田 洋一  筑波大学, 数理物質系, 講師 (20435598)

研究分担者 境 誠司  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (10354929)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードナノワイヤー / Ge(110)
研究実績の概要

本研究では、Ge(110)表面を用いて独自に作製した単一配向ナノワイヤー(NW)の応用を開拓するための研究を行う。H28年度の目標は、「Ge(110)上のAu及びPt誘起単配向NWの構造及び電子状態解析とその制御」であり、ここでは、様々な表面科学的手法を用いて単一配向Ge-NWの原子構造と電子状態を決定することを目指した。
本年度は、Ge(110)表面にPtやAuを蒸着し、その後のアニール処理により、これらの元素が誘起する単一配向NWを作製した。表面構造は走査トンネル顕微鏡(STM)による直接原子観察と、全反射低速陽電子回折(TRHEPD)を用いることで解析を試みた。電子状態は準安定He原子線脱励起分光(MDS)、と角度分解放射光光電子分光(ARPES)により解析した。この結果、STMで十分構造を制御した試料のMDS計測において、Pt誘起のNWでは、最表面の原子種がGeである可能性が示され、これを原著論文として報告した。
一方、TRHEPDによる構造解析、及びARPESによる電子状態解析は、それぞれ実験を行ったが、解析に十分なデータが得られていない。これは、主に外部機関の試料作製環境が十分でなく、良い試料の作製が困難であったことによる。このため、次年度は今年度における達成目標を達成するため、実験環境の工夫を含めた研究推進策を講じる必要がある。
また、本年度の結果から、単一配向Ge-NWのテンプレート表面としての利用が示唆されているため、次年度では、この方面への応用を開拓するための研究を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H28年度においては、Ge(110)上のAu及びPt誘起単配向NWの構造及び電子状態解析と、NWの構造制御が目標であった。この計画のうちの大部分を達成し、論文発表を行った。ただし、一部、達成できていない計画があり、これらは次年度に持ち越すこととなった。これらの概要を以下に示す。
本年度は、Ge(110)表面にPtやAuを蒸着し、その後のアニール処理を施すことで作製される単一配向のNW構造に注目した。ここでは、作製時のアニール処理温度を変化させることで、ある程度の構造制御が可能となった。これらのよく定義されたNW構造を走査トンネル顕微鏡(STM)により決定した。さらに準安定He原子線脱励起分光(MDS)において、最表面原子による準安定He原子の脱励起過程を調べることで、最表面原子種がGeであることが示された。光電子分光の結果からは、表面近傍の状態密度の上昇が見られた。これらの結果から、 この系では、Ge上に蒸着された金属元素が、アニール処理によりサブサーフェス領域に潜り込み、最表面にはGeが析出していることがあきらかになった。したがって、表面のNW構造は、極薄Ge層によるものであることがわかった。これらの結果を原著論文にまとめ、出版した。
一方、今年度の計画に含まれていたが、十分達成できなかった事柄として、全反射低速陽電子回折(TRHEPD)を用いたNW構造解析や角度分解光電子分光による電子状態解析があげられる。これらは、いずれも実験を行ったが、十分なデータが得られていない。これらはいずれも外部の共用実験施設を利用するものであり、そこでの試料作成環境(真空環境、残留不純物など)が必ずしも十分でなく、良質な試料が作成が困難であったためである。このため、良質な試料を真空搬送するなどの工夫が必要となった。

今後の研究の推進方策

H29年度においては、NW構造の巨視的電気伝導やスピン伝導を計測する予定であった。これらは研究協力機関において行う予定としていた。しかし、H.28年度において、他機関で実験する際に、そこでの真空環境が十分良好でない場合、良質な試料が得られないことが問題となることがわかった。これと同様の問題がH29年度に予定している課題にも当てはまる。このため、次年度の研究推進のためには、筑波大学で作製した良質な試料と同等の試料を外部機関で計測するための工夫が必要となる。このためには、試料搬送機構の工夫もしくは、外部機関においてその場で試料作製作製するための機構の開発が重要となる。これらの研究推進の工夫を早急に確立することが必要である。
一方で、H28年度において、単一配向Ge-NWをテンプレートとすると有機半導体の配向制御が可能になることが示された。これを利用した有機半導体の構造制御のための研究を展開してゆくことも、本研究推進の方策であると言える。

次年度使用額が生じた理由

研究分担者の組織改変の影響で、次年度に予定していた実験の遂行が不透明となり、この準備が遅れているため、資金計画に変更が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度の研究計画を早急に確定し、H28年度に使用予定であった資金を次年度に使用する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Pt- and Au-induced monodirectional nanowires on Ge(110)2016

    • 著者名/発表者名
      T. Watanabe, Y. Yamada*, M. Sasaki, S. Sakai, Y. Yamauchi
    • 雑誌名

      Surf. Sci. Lett

      巻: 653 ページ: L71

    • DOI

      DOI: 10.1016/j.susc.2016.05.009

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Proximity-induced spin polarization of graphene in contact with half-metallic manganite2016

    • 著者名/発表者名
      Sakai, Seiji; Majumdar, Sayani; Popov, Zakhar; Avramov, Pavel; Entani, Shiro; Hasegawa, Yuri; Yamada, Yoichi; Huhtinen, Hannu; Naramoto, Hiroshi; Sorokin, Pavel; Yamauchi, Yasushi
    • 雑誌名

      ACS Nano

      巻: 10 ページ: 7532-7541

    • DOI

      DOI: 10.1021/acsnano.6b02424

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Overlapping of Frontier Orbitals in Well-Defined DNTT and Picene Monolayers2016

    • 著者名/発表者名
      Yuri Hasegawa, Yoichi Yamada, Takuya Hosokai, Yutaka Wakayama, Koswattage Rasika, Masahiro Yano and Masahiro Sasaki
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. C

      巻: 120 ページ: 21536-21542

    • DOI

      DOI: 10.1021/acs.jpcc.6b06838

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Detection of Molecular Oxygen Adsorbate during Room-Temperature Oxidation of Si(100)2×1 Surface: In situ Synchrotron Radiation Photoemission Study2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshigoe, Akitaka; Yamada, Yoichi; Taga, Ryo; Ogawa, Shuichi; Takakuwa, Yuji
    • 雑誌名

      Jpn. J. Appl. Phys

      巻: 55 ページ: 100307

    • DOI

      10.7567/JJAP.55.100307

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Si(111)-(√7×√3)-In表面超伝導体上へのCuPc及びF16CuPc吸着による超伝導転移温度変化2017

    • 著者名/発表者名
      角直也, 山田洋一, 佐々木正洋, 吉澤俊介A, 内橋隆A
    • 学会等名
      日本物理学会第72回年次大会
    • 発表場所
      大阪大学(大阪府、豊中市)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-20
  • [学会発表] Si(111)-(√7x√3)-In表面超伝導体へのCuPc/F16CuPcによる表面ドーピング2017

    • 著者名/発表者名
      山田洋一、角直也、佐々木正洋、吉澤俊介、内橋隆
    • 学会等名
      第64回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-17
  • [学会発表] ペンタセン単結晶上のC60/Pn積層膜の界面制御と励起子ダイナミクス2017

    • 著者名/発表者名
      岩澤 柾人1、長谷川 友理1、細貝 拓也2、松崎 弘幸2、小金澤 智之3、山田 洋一1、佐々木 正洋
    • 学会等名
      第64回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-17
  • [学会発表] 高配向TADF分子膜の分子レベル構造と電子状態2017

    • 著者名/発表者名
      長谷川 友里1、南 颯人1、山田 洋一1、佐々木 正洋1、細貝 拓也2、中野谷 一3、安達 千波矢3、Enrique Ortega4
    • 学会等名
      第64回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-17
  • [学会発表] GOS(Graphene-Oxide-Semiconductor)型電子源の電子放出特性2017

    • 著者名/発表者名
      飯島 拓也1、田中 駿丞1、長尾 昌善2、根本 善弘3、竹口 雅樹3、山田 洋一1、佐々木 正洋1、藤田 淳一1、村上 勝久1,2,3
    • 学会等名
      第64回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-17
  • [学会発表] 椀状分子sumanene単分子層の構造及び電子状態計測2016

    • 著者名/発表者名
      前田 拓郎1、長谷川 友里1、コスワッタゲ ラシカ2、山田 洋一1、佐々木 正洋
    • 学会等名
      第77回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-16
  • [学会発表] 単層h-BN上における強磁性Coナノ粒子の作製2016

    • 著者名/発表者名
      渡邉 貴弘1、山田 洋一1、佐々木 正洋1、小出 明弘2、圓谷 志郎3、境 誠司
    • 学会等名
      第77回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-16
  • [学会発表] Si(111)-(√7×√3)-Inの表面へのアクセプター分子およびドナー原子の吸着による超伝導の制御2016

    • 著者名/発表者名
      角 直也1、長谷川 友里1、山田 洋一1,2、佐々木 正洋1、吉澤 俊介2、内橋 隆
    • 学会等名
      第77回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-16
  • [学会発表] イットリウム鉄ガーネット上のグラフェンのスピン分極と異常ホール効果2016

    • 著者名/発表者名
      境 誠司1,2,5、Sorokin Pavel B.3,1、白 怜士4、山田 洋一5、圓谷 志郎1、楢本 洋1、Avramov Pavel V.6,1、安藤 和也4、山内 泰
    • 学会等名
      第77回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-16
  • [学会発表] 室温水素雰囲気中でのPd(110)における水素の挙動2016

    • 著者名/発表者名
      生津達也, 庄司陸人, 前田拓郎, 冨永正人, 宮城良世, 山田洋一, 佐々木正洋
    • 学会等名
      日本物理学会 2016年秋季大会
    • 発表場所
      金沢大学(石川県金沢市)
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-16
  • [学会発表] HYDROGEN AT PALLADIUM SURFACES STUDIED BY He ATOM SCATTERING2016

    • 著者名/発表者名
      Yoichi Yamada
    • 学会等名
      12th International Conference on Diffusion in Solids and liquids
    • 発表場所
      SPRIT, CROATIA
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-06-30
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 佐々木山田研究室

    • URL

      www.bk.tsukuba.ac.jp/~surflab/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi