研究課題/領域番号 |
16K13680
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉本 宜昭 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00432518)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 走査型プローブ顕微鏡 |
研究実績の概要 |
単分子の化学反応をその場で観察することは化学の長年の夢である。本研究では、固体表面に吸着した個々の有機分子の化学反応を実空間で可視化することを目的とする。原子間力顕微鏡(AFM)を用いると有機分子の形を可視化することができるので、化学反応による構造変化を直接捉える事ができる。反応中間体、反応生成物の構造の同定、さらに個々の反応経路の活性化障壁の測定を行う。これにより、例えば触媒反応場で起こる化学反応など、ローカルで起こる化学反応を理解することにつながる。今回、AFMを用いて表面に吸着することで誘起される新しい化学反応を可視化することに成功した。個々の有機分子は探針との斥力によりイメージングすることができ、それぞれの分子を化学反応物も含めて同定することができた。この化学反応は表面への吸着構造が重要な役割を果たしていることを明らかにした。そして、一部の化学反応において活性化障壁の見積もりにも成功した。一方、化学反応の場となる二酸化チタン表面上のプラチナ単原子の電荷状態をケルビンプローブ顕微鏡法(KPFM)で調べた。プラチナの単原子は正に帯電することが実験的にわかり、第一原理計算によってそれを再現することができた。また、KPFM測定のメカニズムの解明を行い、正しい測定を行うための条件を明らかにした。具体的には、AFMの探針が表面に接近するにつれて、探針にダイポールが誘起され、表面本来の情報を得ることができないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属基板に有機分子を吸着させて、AFM観察を行ったところ、有機分子の形状、吸着サイト、吸着状態を同定できるほど高分解能な画像の取得に成功した。さらに、加熱によって新しい分子が観察され、化学反応物を同定することができた。一方、化学反応の場として重要な二酸化チタン表面においてプラチナ単原子の電荷状態を同定することにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、表面化学反応の可視化の実験を行っていく。特に、有機分子を吸着させる基板を様々に変えて実験を行い、吸着サイトや吸着様式による影響を詳しく調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
原子間力顕微鏡の観測室で試料を加熱する機構について、試行錯誤をしていたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試料加熱の機構と合わせて測温できるシステムを構築していく予定である。
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