研究課題/領域番号 |
16K13684
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
畑野 敬史 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00590069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電界効果 / 窒化物薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、軽元素を含む機能性材料において、軽元素の出入りをイオン液体ゲーティングによって制御することを目指している。計画に従い、本年度は窒化物薄膜CrN、Mn3CuNについて実験を行った。 CrNについては、電界効果実験に供する結晶性の高い極薄膜を得るべく、薄膜作製の条件出しを行った。その結果、窒素量が十分な状態で成膜する場合には、絶縁体的挙動を示す薄膜が得られ、一方窒素量が不十分な場合は金属的挙動を示す薄膜を得られることが分かった。続いて、絶縁体的挙動を示す薄膜をフォトリソグラフィ及びArイオンミリングを用いてデバイス加工し、ゲート電圧印加したところ、電気抵抗が一桁程度減少することが分かった。この際、電圧の正負にかかわらず同様の抵抗変化が現れること、また、大きなヒステリシスを有する伝達特性曲線が得られたことから、静電的キャリア注入ではなく、薄膜に窒素欠損が生じたことによって金属的な伝導特性に近づいた可能性がある。 Mn3CuN薄膜についても、やはり成膜条件を最適化することで高品位の薄膜を得ることに成功し、デバイス加工及び電界効果実験を試みた。その結果、こちらでは静電的キャリア注入によると思われる抵抗減少が確認されたのみで、窒素の出入りに起因すると思われる挙動は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、一年目においては窒化物薄膜CrNおよびMn3CuNの高品位単結晶薄膜をマグネトロンスパッタリング法により作製すること、また、これらを電界効果デバイスへと加工し、ゲーティング実験を実行する予定であった。薄膜作製については、対象としたいずれの薄膜においても、雰囲気中の窒素量依存性、成膜温度依存性、基板依存性などの条件出し綿密に行うことで、00l配向したエピタキシャル薄膜を得ることに成功するとともに、これらの窒化物薄膜をas grownの物性を損ねることなく電気二重層トランジスタデバイスへ加工するプロセスを確立した。一方、伝導特性測定については、予算の問題から、雰囲気ガス置換が可能な冷凍システムを新たに準備することができなかったが、所属グループが所有する既存の冷凍機を活用することで高真空下でのゲート電圧印加を行った。これにより、窒素の欠損をアシストする環境下での実験を実行することができた。窒素導入方向の実験についても専用のパージボックスを整備し、予備段階ではあるが実験を進めており、おおむね順調な進展と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
材料の違いによる軽元素の出入りについての情報も得るため、MoN、NbNなど別の窒化物薄膜も新たに対象に加え、実験を行う計画とする。これに伴い、これらの材料についての成膜条件出しを進める。一方、準備したパージボックスを用いて、室温における窒素雰囲気中でのゲーティングをさらに行い、窒素導入を目指した実験を上記の窒化物薄膜も含めて行う予定である。加えて、O2, N2,などの雰囲気下でデバイスにゲート電圧を印加し、電圧を保ったまま低温域における伝導特性を測定するために、所属グループが所有する冷凍装置を改造し、内部の雰囲気ガスを置換する機構を導入する。一方、計画に従い、本年度においては窒化物薄膜のみならず、MBE法によって作製するNdFeAsO薄膜も実験対象とする。所属研究グループに蓄積されているノウハウを活かし、電界効果実験に適したNdFeAsO極薄膜試料を作製し、デバイス作製及びゲーティング実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の問題から、当初の予定と異なり、ガス置換可能な冷凍機を購入することができなかった。一方、必要消耗品の購入枠を増やした。その差額分である。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の研究結果に基づき、次年度の研究の実施にも多少の修正が見込まれるため、前年度の研究費と併せて研究を推進していく。主に、パージボックス整備、ナノボルトメーター、冷凍機の改造などを計画している。
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