波長10-50nm程度の極紫外(XUV)領域では、高次高調波を基とするレーザー光源技術の発展により、瞬間パワー > 1GW、パルス幅500アト秒の実用的なフルコヒーレントXUV光が実現しつつある。本研究では、この高次高調波を回折限界で集光する、XUV多層膜ミラーによる集光システムを開発する。具体的には、独自に開発した解析的光学設計法により、大開口数(0.3から0.5)で安定してサブ100nm集光が可能な新規設計解を見出す。さらに、新規集光システムを試作し、現有のXUV光源を回折限界集光し、原子・分子内において非摂動論的な物理現象が十分に発現する高強度アト秒XUV場を発生させることを目指す。 H29年度は、光学設計を決定しさらに大開口数集光ミラーを試作を行った。集光ミラーの試作では、ミラー基板の研磨、多層膜ミラーの成膜、および、光軸調整の3ステップが必要となる。多層膜ミラーの成膜では、高反射率に加え、アト秒パルスを維持するため、広反射帯域と低群遅延分散(チャープ)が求められる。特に、多層膜ミラーでは、複数の界面で生じる微弱な反射光を干渉させて高い反射率を得る必要がある。このため、反射光学系にも関わらず、反射位相に色分散(色収差)が生じることが知られている。H29年度には、初めに、多層膜ミラーによる集光光学系で生じる色収差を定量的に数値計算するソフトウエアを開発した。次に、色収差の発生を記述する解析的モデルを構築し、多層膜ミラーの周期長分布制御による色消し条件を求めた。最後に、色消し条件を満足する様に周期長分布を制御した多層膜ミラーを精密ミラー基板上にスパッタ成膜し、集光・結像光学系を完成させた。
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