研究課題
赤外域超短パルスレーザーを用いた非線形振動分光法は、分子の振動・構造ダイナミクス、モード間カップリングなどの貴重な情報を与えるが、振動遷移モーメントが小さいことから、これまでの観測対象は、同種分子が多数存在する系の、特定の振動モードに限られていた。本研究では、赤外域でのプラズモニクスと非線形分光の融合により、こうした課題を解決する新規振動分光法の創出を目的とした。以下にその成果をまとめる。(1)赤外表面プラズモンの基礎特性評価:金/空気界面での伝搬型表面プラズモンの伝搬長を計測し、赤外域では10ミリメートル以上の長距離伝搬が可能であること、表面モルフォロジーによってそれを制御できることを明らかにした。また、自作した走査型近接場顕微鏡を用いて共鳴アンテナに宿る局在型表面プラズモンの空間モードの可視化に成功した。(2)表面増強-非線形振動分光法の開発:高い電場増強度と高速応答性をあわせもつ金属ナノ構造(共鳴アンテナの二次元周期配列)を設計・作製し、透過型配置における非線形振動分光を行った。十分な信号強度を得るために必要な励起パルスエネルギーを従来の100分の1に低減すること、局所的な信号増強度が1千万倍に達することを明らかにした。(3)反射配置の開発:本手法を界面選択的な計測法へと進化させるべく、反射配置を提案・実証した。アンテナの二次元配列からの散乱光を反射配置で捉えることにより、アンテナと結合する分子振動モードの非線形応答を顕著に増幅して計測できることを明らかにした。(4)ダイナミクス解析:分子振動は共鳴アンテナとの結合を通してその非線形応答が増幅されるが、その緩和ダイナミクスはアンテナに影響されず、ありのままの状態が観測されることを明らかにした。以上の成果は、非線形振動分光によって観測できるモード種を拡大するとともに、単分子層・界面計測への可能性を拓く、重要な貢献である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.ashihara.iis.u-tokyo.ac.jp/