研究実績の概要 |
本研究は,金属もしくは抵抗体からなる平面構造(メタ表面)における電磁波の吸収による発熱を観測することでテラヘルツ波を含む低周波数の電磁波の可視化(イメージング)することを目的している.特に本研究では,チェッカーボード型自己補対メタ表面と呼ばれるメタ表面を利用することで,チェッカーボード格子交点の微小領域の局所的な発熱を利用することができ,偏光の情報も取得することができる.昨年度までの研究をさらに発展させるために,本年度はより高効率のイメージングを目指し,熱伝導率がより低くより薄い基板を用いることを検討した.まずは,熱・電磁界の混成計算によってメタ表面での発熱量とそれによる温度上昇を計算した.計算機シミュレーションでは,昨年度まで用いていた厚さ1ミリメートルの合成石英基板に代わるものとして,8マイクロメートルのポリイミド薄膜を想定して計算を行った.計算の結果,2倍以上の温度上昇を観測し,サーマルイメージングの効率が向上することが分かった.加えて,本研究で必要となる発熱体(抵抗体)の面抵抗率が吸収の最大となる点から190オーム程度であることが分かった.これは,電磁波応答における基板の効果がほぼ無視できることを意味し,理想的な自己補対条件を満たしていることを意味する.以上の計算による検討に加えて,テラヘルツ帯での実験に向けて,ポリイミド薄膜へのメタ表面作成を検討した.合成石英基板上にポリイミド薄膜を成膜し,金属リフトオフによってチェッカーボード型メタ表面を作成した後,基板から剥離することで8マイクロメートル程度の非常に薄い膜上にメタ表面を作成することができた.
|