研究課題/領域番号 |
16K13701
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
渡邉 紳一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (10376535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デュアルコム分光法 / 偏光計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、高い周波数分解能と高速性を兼ね備えるデュアルコム分光計に、高い偏光計測精度という新しいファンクションを加えた分光計を開発し、その応用展開を狙う取り組みである。研究代表者を発明者の一人とした基本特許申請は本課題開始直前に完了した。本研究課題では、まずは新しい発明についての定量的な実験検証を行い、その後に様々な応用を示す戦略で研究を進めている。平成28年度は、前者の「定量的な実験検証」について実施を完了し、米国光学会誌上で発表を行った。具体的な開発内容は以下の通りである(以下の文章は、応用物理学会学術講演会予稿集に投稿した文章を一部改変したものである)。 本開発では、中心波長が1.55 マイクロメートルのデュアルコム分光計に、安定な周波数で回転する波長板を組み合わせた偏光計測装置を開発した。2つの周波数コムを偏光ビームスプリッタで重ね合わせ、光バンドパスフィルターで波長範囲を1.53~1.57 マイクロメートルに制限してから、偏光子、サンプル、回転1/4波長版、偏光子を通して検出器へと導いた。その結果、回転1/4波長版によって偏光変調が印可され、光コムの成分1本1本に対してその偏光状態を表す新しい光コム成分が出現することを見いだした。この新しい光コム成分の振幅と位相を解析することで、光コムの成分1本1本の偏光状態を決定することに成功した。また、サンプルとして波長板と偏光子を用いて、本発明の原理検証実験を行った。波長板あるいは偏光子の角度を変えながら計測を行い、偏光状態の変化を定量的に捉えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題提案の根幹をなす偏光デュアルコム分光法については、簡単な応用例を含め文献としてまとめて出版した。残り1年間で、物性計測を中心とした応用事例を示し、本手法の重要性を示したい。
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今後の研究の推進方策 |
デュアルコム分光計の開発は、精密な周波数ロック機構の構築など技術的に難しい点が多い。そのため、現在は、光周波数コム開発のエキスパートである産業技術総合研究所のデュアルコム分光計を借用しながら開発を進めている。しかしながら、今後同技術の積極的な応用展開を図るためには、実験スペースの問題などから、研究代表者の所属する慶應義塾大学でデュアルコム分光計を実現するほうが効率がよい。 したがって、平成29年度は、まずはデュアルコム分光計の開発に集中し、できるだけ早期に慶應義塾大学で実験・研究を行うことができるようにする。その後は生体分子の円偏光二色性計測など、新しい発明の長所を活かすことができるような実験を行い、本手法の有用性を確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
デュアルコムを実現するために必要な電気光学変調器の選定が遅れ、平成28年度に購入することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入時期が遅れた電気光学変調器は、平成29年度始めすぐに購入予定である。
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