研究実績の概要 |
フェムト秒レーザーを適切な条件で照射することでイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(3Y-TZP)表面への周期的微細構造が形成できることを見出した(M. Kakehata et al., Proceedings of LAMP2015, A201 (2015))。3Y-TZPは機械的特性に優れインプラントや人工関節などの医療用部材に用いられており、本手法を応用することで親水性の制御や機能性材料膜の強固なコーティングなど医療用部材の性能向上が期待される。本研究では、医療用3Y-TZPへの周期構造形成条件の探索、形成機構の解明、構造形成された材料の特性評価などを行い、本手法のインプラントへの応用の可能性を探索することを目的とし研究を実施した。平成30年度は以下の結果を得た。 1)周期構造の形成機構解明を目的として、波長の異なるフェムト秒レーザーにより形成された周期構造断面の透過電子顕微鏡による詳細な観察を行い、最表面付近の結晶性、結晶粒の状態、内部欠陥の状態に関するる新たな知見を得た。 2)インプラント用部材の規格ISO13356に基づき、4点曲げ強度試験と繰り返し疲労試験を実施した。照射レーザー波長への強度の依存性を調べ、規格を満たす条件を明らかにした。 本研究により従来報告がなかった a) ジルコニアセラミックス表面に形成される周期構造の各種条件(レーザー波長、パルス幅、フルエンス、照射回数)への依存性を明らかにし、また b) 形成機構解明のために異なる偏光を有するダブルパルス照射実験や透過電子顕微鏡を用いた断面観察を行い新しい知見を得るとともに、c) ISO規格に基づいた機械強度試験や加速劣化試験を実施し、本手法の実用化への高い可能性を示すことができた。以上より、本研究の結果は学術的にも社会的にも意義が大きいと考えられる。
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