研究課題/領域番号 |
16K13708
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 俊郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (30312599)
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研究分担者 |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (10272262)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ医療 / 細胞センサ / 極微量刺激計測 / 異種プラズマ刺激 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
本研究では,大気圧プラズマによる細胞への遺伝子導入や血液凝固等の細胞活動に作用する極微量のプラズマ刺激の時空間分布を測定できる『超高感度細胞センサアレイ』の作製を目的としている.1年目である本年度は,化学的刺激(活性種)および物理的刺激(電界)を生成,測定できる大気圧プラズマ生成装置を作製し,各々の刺激を計測するとともに細胞に対する作用を観測した. 1. 大気圧プラズマ生成装置と液中マイクロプラズマ生成装置を作製し,それらのプラズマを生理食塩水に照射した際に生成される活性種を測定した.このとき,液中には数10を超える化学的活性種が生成されることが数値計算で予測されている.また,従来の活性種の検出プローブは多くが非選択的であり,支配的に生成されている活性種を同定できないという問題があった.そこで,本研究では水酸基ラジカル・過酸化亜硝酸・次亜塩素酸のみを検出でき,かつそれぞれの感度が異なる二種類の化学プローブAPF及びHPFを組み合わせて用いることにより,支配的に生成される活性種がOHラジカルであることを明らかにした. 2. OHラジカルの液中濃度の保持時間依存性を測定した結果,液中マイクロプラズマの方が大気圧プラズマよりも多量のOHラジカルを生成でき,かつ液中で比較的長時間存在していることを明らかにした. 3. 大気圧プラズマと液中マイクロプラズマにより液中底部に形成される電界をポッケルスセルを用いて計測した.その結果,どちらの場合にもプラズマを照射することで液中の電位が上昇し,底部のガラス容器との間で電界が形成されていることを明らかにした. 4. 大気圧プラズマと液中マイクロプラズマを照射した際の細胞内カルシウムイオン濃度を計測することで,活性種刺激および電界刺激に対する細胞感受性の特性曲線を作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は,化学的刺激(活性種)および物理的刺激(電界)を生成,測定できるプラズマ生成装置を作製し,それらの刺激を計測することまでを計画していたが,これらの刺激の細胞活動への作用についても,細胞内カルシウムイオン濃度を計測することで明らかにし,細胞感受性の特性曲線を作成することまで進展したため,当初の計画以上であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
1. 初年度に既に化学的刺激および物理的刺激の細胞活動への作用を計測しているが,初年度は1種類の細胞のみを使用していたため,2年目は種々の異種刺激に反応するイオンチャネルを有する複数の細胞を準備し,そのイオンチャネルで流入するカルシウムイオンに反応して蛍光を発する物質を細胞内に導入する.このとき,異なるイオンチャネルを有する細胞内での蛍光物質の波長を変えることで,どのイオンチャネル,すなわち,どの刺激が作用したのかが分かる. 2. 異なるイオンチャネルを有する細胞のプラズマ誘起異種刺激に対する流入カルシウムイオン量の校正曲線を利用して,それぞれの細胞をアレイ状に並べて,異種プラズマ刺激の空間分布を測定する.アレイ状の細胞の蛍光測定に関しては,二次元計測できるようにCCDカメラを用い,また異なる波長の蛍光物質を発光させるために,現有の複数の波長のレーザー光を入射できるように工夫する. 3. 細胞センサアレイを導入した溶液の表面に大気圧プラズマを照射し,照射位置からの距離および照射後の時間に対して,それぞれの細胞へのカルシウムイオン流入に伴う蛍光強度の変化を測定する.初年度の成果を基に,異種プラズマ刺激を印加した場合に,その刺激に対応するイオンチャネルを有する細胞が反応しているかどうかに注目する.
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