本研究では、弱電離プラズマ内の種々の反応、すなわち、電子衝突に起因して生じた活性種の反応系全体についての理解と可視化のため、ネットワーク解析手法を応用する。弱電離プラズマ内に存在する数10~数100 の種の活性種とそれらの間の反応式を、節点および節点間を結ぶ枝で成り立つグラフ構造に割り当てて可視化し、中心性指標等ネットワーク解析で導出される種々の指標値を計算し、反応系全体の中に占める種の役割や反応式の特定を行う。そして、弱電離プラズマ物理・化学の抱えていたあいまいさを客観的指標で示す手法の確立を目的としている。 今年度は、化学反応中の各粒子の果たしている役割の可視化と、実験結果との比較検討を行った。化学反応中の各粒子の果たしている役割の可視化については、例としてシラン分子ガス中でのプラズマ内反応についてあげると、58の粒子種に対して222の反応を扱う。粒子種位置の2次元プロットとして媒介中心性の対数軸と近接中心性の線形軸を用いることで、それぞれ中間体としての役割の指標値と反応物-生成物間の役割変化の指標値を与えることが明らかとなり、ランダムグラフの場合と比較して統計性として有意な差があることがわかった。次に、実験結果との比較検討については、前年度に整備した、大気圧よりやや低圧力下で生成が可能なアンモニア分子ガス中でのプラズマ生成実験において、ヒドラジン粒子の生成量と窒素分子・NH活性種・水素原子等の発光強度変化を観測した。すると、化学反応式に加えて励起状態の表現を加えたネットワーク構造において、各粒子の固有ベクトル中心性の改正指標値が粒子密度や発光量の変化を表していることがわかった。 以上のように、本研究により、複雑系としての弱電離プラズマ中の化学反応を可視化することに成功し、それは粒子種全体での統計的性質を明らかにするとともに各粒子固有の役割や振舞の表現を可能にした。
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