研究実績の概要 |
二酸化炭素の削減・固定化に向けて、人工光合成や電気化学還元法に代表される様々な技術開発の必要性が高まっている。我々は、気液界面プラズマを活用することによって、無触媒・中性pHの条件で二酸化炭素から低分子有機化合物の一つである過ギ酸への変換が可能であることを世界で初めて発見した。本研究では、その機構を解明していくことによって、さらに高エネルギー効率で過ギ酸を合成する革新的プラズマ技術を開発することを目指して、密閉型気液界面プラズマ反応の診断と反応機構の検証に焦点を当てて研究を進めた。密閉型気液界面プラズマにより、二酸化炭素と水だけから有機物の過ギ酸が合成される反応機構としては、水分子の解離によって生成されるH ラジカルとOH のラジカルが、振動励起された二酸化炭素分子と逐次反応するモデルが考えられる。その反応機構を検証していく前提として、まず放電プラズマ中での水分子の密度を知ることが必要である。そこで、まず、波長可変半導体レーザー赤外吸収分光法を用いて、気液界面近傍の水分子の密度を測定した。気液界面が反転した構造に加えて、上下が反転していない通常の誘電体バリア放電装置においても同様の測定を行った。 その結果、上下反転した密閉型気液界面プラズマ装置では、非反転の誘電体バリア放電装置に比して、下からのガス流によって水蒸気が上部電極に向かって押し上げられるため、その密度が低下していることがわかった。そのことが、過酸化水素の生成を低減し、相対的に過ギ酸濃度を高めている要因であると考えられる。さらに、OH, Hラジカルの密度に関する基礎的データに基づいて、気液界面プラズマ反応を支配する実験パラメータを変化させて、選択的過ギ酸合成反応のメカニズムを解析した。
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