研究課題/領域番号 |
16K13717
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
池田 浩也 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (00262882)
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研究分担者 |
早川 泰弘 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (00115453)
下村 勝 静岡大学, 工学部, 教授 (20292279)
村上 健司 静岡大学, 工学部, 教授 (30182091)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フレキシブル熱電変換材料 / 圧電素子 / コジェネレータ |
研究実績の概要 |
本研究は,振動と熱から同時に電力を取り出すための発電素子(コジェネレータ)の開発を目指している.本年度得られた主な成果を以下に示す. 1.昨年度に構築した面内方向および厚さ方向のゼーベック係数測定装置を用いて,ZnOナノ結晶フレキシブル熱電変換材料を作製する際に必要となる基板用布材料について,様々な導電性布材料(炭素布,NiCu布,銀布)のゼーベック係数測定を行った.NiCu布ではn型の,炭素布と銀布ではp型のゼーベック係数を示すことを明らかにした.この原因を明らかにするため,現在,ホール測定など,キャリア特性に関する測定を進めている.また,銀布上にZnOナノ結晶を形成することにより, ゼーベック係数がn型に変化した.ZnO結晶の酸素欠損に起因する伝導電子の影響と考えられる. 2.昨年度自作した起電力測定装置の改良を行い,圧電素子/熱電変換素子ハイブリッド構造の整流作用について,より精度の高い測定を行った.市販の圧電素子をn型Si基板に貼り付けた試料に対して,モーター駆動で圧電素子を振動させながら,Si基板に温度差を与えたときの熱起電力の変化を測定した.その結果,温度差を与えることにより,起電力の振動中心電圧が正極方向にシフトすることを見出した.この結果は,圧電素子とSi基板の間でキャリアの注入・流出が起こっていることを示唆している. 3.ACカロリメトリ法に基づいてフレキシブル材料の厚さ方向の熱伝導率を測定するための装置作製に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には,フレキシブル熱電変換材料として,低コストかつ大面積に形成可能な熱水法によりZnOナノ構造を布基板上に成長させる技術を構築するとともに,金属を添加することによりn型試料とp型試料を作製することに成功した.それに加えて,フレキシブル材料の面内方向および膜厚方向のゼーベック係数を測定するための装置を自作し,フレキシブル材料のゼーベック係数を実測した.さらに,圧電素子/熱電変換素子ハイブリッド構造の整流作用を測定するための装置も自作した. 本年度は,本研究で最も注目かつ期待していた圧電素子/熱電変換素子ハイブリッド構造における整流作用について,それを示唆する実験結果が得られたことにより,研究が大きく前進したと考えられる.また遅れていた熱伝導率測定についても装置作製に着手しており,装置組立後速やかに測定精度の確認に移行できるものと思われる. 以上の点から,本研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,フレキシブル熱電変換材料の基板として使用する予定の種々の導電性布のゼーベック係数について,面内方向ならびに膜厚方向の測定を終えている.今後は,現在構築中の面内方向ならびに膜厚方向の熱伝導率測定装置を完成させて,導電性布の熱電特性を総合的に解析する.さらに,ZnOナノ結晶/導電性布材料を作製して,ゼーベック係数測定,ホール測定,熱伝導率測定を行い,ナノ構造フレキシブル材料の熱電変換特性を総合的に評価し,その物理現象を明らかにするとともに材料の最適化を図る. また,種々の圧電素子材料を形成し,その熱伝導率測定を行う.その結果を元にして,圧電素子/熱電変換素子ハイブリッド構造に最適な材料の選定を行う. 本年度,n型シリコン基板とピエゾ素子のバイブリッド構造を用いて,整流作用を示唆する実験結果を得ることができた.今後は,その整流作用をより顕著に観測するために,圧電素子にn型とp型のSi基板を対にして取り付け,圧電素子に加振した際の起電力を測定する.また,実験結果を説明するための圧電材料/熱電材料界面のキャリア輸送モデルを構築し,物理現象を明らかにするとともに材料の最適化を図る.
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