インパルス熱源を与えることにより、多数の熱モードを励起し、それらを選択的に検出する手法を確立した。さらに、熱源を点から直線状とすることにより、より、モード選択を向上することができる可能性を検討した。まずは、有限体積法によりその効果を確認した。このシミュレーションでは、アルミニウム直方体を用い、帯状のインパルス熱源を与えた際の温度応答を時間発展的に計算した。その結果、理論的に予測される熱モードが高い選択性により発生することが明らかとなった。 実験的には、微小試料の任意の場所を加熱・検出することのできる光学系を構築した。さらに、特殊な楕円レンズをもちいることにより、加熱領域を帯状とすることに成功した。結果、熱モードの検出においてモード選択性が向上した。さらに、シミュレーションにおいて、試料の一部が熱接触を受けているときの解析を行った。これは、実際の試料は完全に熱的に孤立していることはなく、少なからず、熱接触を有するためである。加熱箇所と検出箇所を様々に変化させてシミュレーションを行った結果、もっとも緩和時間の長いモードにおいて系統的な知見を得ることができた。さらに、同じモードの腹内での加熱と検出、および、節をまたいだときの加熱と検出における温度応答のシミュレーション結果から、正確に緩和時間を決定するための実験条件を予測することができた。また、計測プログラムの確立を行った。個々の加熱パルスごとに応答を積算する形式の波形取得型と、10パルス程度の応答を一気にとりこみ、その後、自動的に分割して積算する形式の制御プログラムを確立した。これらにより、計測条件に応じてプログラムを選択することができる。
|