研究課題/領域番号 |
16K13721
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
加田 渉 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (60589117)
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研究分担者 |
村尾 智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10358145)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子ビーム / ダイヤモンド / SiC / NVセンター / 固体内記録 / エシカルジュエリー |
研究実績の概要 |
本研究は、高エネルギーイオン注入技術を利用し、「任意方法で秘匿情報を固体素子内に記録する媒体」、つまり、固体秘匿情報記録媒体の開発を目的とする。具体的に、単結晶ダイヤモンドを主な試験対象として、その表面及び内部にあらかじめ決定した空間的な情報配列に沿ってイオン注入処理層の形成を行う。N-Vセンターを形成できる窒素や、陽子線、並びに炭素近傍の他元素について、その打ち込み空間の分布を制御しながら注入処理を行うことで、一見すると外部から取り出せない情報配列を基板内に埋め込む。これにより復号方法を知る観察者のみに情報を映し出す秘匿埋め込み型の情報記録素子を実現する。 本年度は、量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所に設置されたシングルエンド加速器並びにタンデム加速器の集束イオンビームラインを利用して実験を行った。高エネルギーイオンビームの制御ソフトウェアに2次元的な情報配列を関連付け、情報配列に沿った照射を可能とした。本技術を活用し、単結晶ダイヤモンドならびにSiC, さらには蛍光活性中心を含むリン酸塩ガラス、蛍石といった鉱物試料に対して、任意の箇所にイオン注入処理を実施した。この方式により、シャドウマスクを必要としない任意構造の照射が可能となった。本処理を行った試料のうち、ダイヤモンドでは1000℃の加熱処理により、陽子線照射試料においても2次元的な情報配列の視認が共焦点顕微鏡設備を利用することで確認できた。またダイヤモンド以外の試料では照射後の加熱処理を経ずに記録情報を参照することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、次年度までに計画していた記録技術開発のうち、蛍石を含む鉱物試料までの照射を実施できた。特に当初予定していた窒素線のみならず、陽子線のような比較的制御性の高い集束イオンビームを用いた記録についても実施することができている。一般的に陽子線は照射量や照射にかかる準備が簡素化できる可能性が高く、これらの利点を活用することで、照射時間等を短縮することが見込める。本利点により、次年度以降の情報記録様式の開発に時間を十分に割きながら研究計画を順当に進めることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において、次年度までに計画していた記録技術開発のうち、蛍石を含む鉱物試料までの照射を実施できた。当初予定していた窒素線のみならず、集束陽子線を用いた記録についても実施することができているため、制御性の高い本ビームを活用した技術開発を進める。照射時間短縮がみこめるため、研究計画にかかる時間を情報記録方式の開発に割くことが可能となると考えられるため、これらの要素検討を行う。さらに、蛍石以外の多様な鉱物試料への応用展開を加速させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に研究分担者が主体となってモンゴル国に出張し、貴石のサプライチェーンについて調査を計画している。初年度の実験結果の想定以上の進展を受けて、貴石のサプライチェーンを調査する範囲について再検討を行った。この上で、次年度に必要となる経費の確保を初年度予算残額から調整することで確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究成果をもとに、計画通りモンゴル国に出張し、貴石のサプライチェーンを調査を行う。確保した予算全額を調査に使用する。
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