研究課題/領域番号 |
16K13723
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 誠 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (40243109)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 可干渉性ガンマ線 / メスバウアー効果 / 偏光制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、磁場等を利用した超微細相互作用により、原子核準位を分裂させたガンマ線源から偏光を制御したガンマ線を生成する。そして、この偏光ガンマ線を、オングストロームオーダーのピエゾ位置制御を行った同種の共鳴原子核を含んだ共鳴透過体を透過させることにより、透過ガンマ線の偏光、寿命(遅延時間)、波形(幅)の制御およびコヒーレントパルス列生成といった先進的なガンマ線の生成に関する実験研究を行うことを目的とする。 本年度は、主として時間分解メスバウアースペクトル測定系の構築を行った。本研究では時間スペクトルの測定に高速MCS(マルチチャンネルスケーラー)システムを使用するが、このシステムの時間分解能は100 psであり、Fe-57の第1励起準位の寿命が141 nsであることより本研究の目的には十分な時間分解能を有している。通常のメスバウアースペクトルでは、ガンマ線のエネルギーに変調をかけるための速度トランスデューサーからの速度信号をMCSのチャンネルアドバンス(時間軸)として使用する。これに対して、本研究ではガンマ線源が第2励起状態から第1励起状態に遷移する際のガンマ線をトリガーとして、その後に第1励起状態から基底状態へ遷移する際に放出されるガンマ線の時間スペクトルをMCS自身の高精度クロックを時間軸として測定する。さらに、トランスデューサーからの速度信号と検出ガンマ線信号とをMCSにおいて対応させることによって、時間分解メスバウアースペクトル測定系を構築した。さらに、Co-57線源へ外部磁場を印加することによる円偏光成分の生成についても確認を行い、メスバウアー測定が可能であることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に予定していた時間分解メスバウアースペクトル測定系の構築についてはほぼ予定どおりに実施することができた。さらに、外部磁場等により準位を超微細分裂させたCo-57線源によるメスバウアーガンマ線源の開発についても円偏光成分生成の検証が終了しており、ほぼ予定どおりに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、今年度は内部磁場により準位を磁気分裂させた多核種メスバウアーガンマ線源の開発とピエゾ制御系の構築を目指す。特に、内部磁場により原子核の準位を磁気分裂させたガンマ線源としては、安定同位体を用いた多層膜等により試料を作製し、これに対して中性子照射等による放射化によりガンマ線源が可能かどうかの検証を行う。また、第2励起準位からのガンマ線検出をトリガーとしてピエゾ駆動機構により共鳴透過体位置をシフトさせる高精度ピエゾ制御系についての開発研究も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に行ったメスバウアーガンマ線源の開発研究において、次年度に予定されているピエゾ駆動機構を当初より高精度に制御することで、より精密な偏光成分生成の可能性が示唆された。よって、線源開発のための同位体使用量を最大限節約することで次年度の制御機構を当初より高度化することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定どおり、中性子照射によりガンマ線源が可能かどうかの検証を行うために、安定同位体を用いた多層膜等により試料作製を行う。加えて、第2励起準位からのガンマ線検出をトリガーとしてピエゾにより共鳴透過体位置をシフトさせる高精度ピエゾ制御系についての開発研究も実施するが、当初予定よりも高精度な速度制御を目指すものとする。
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