本研究では、磁場等を利用した超微細相互作用により、原子核準位を分裂させたガンマ線源から偏光を制御したガンマ線を生成し、この偏光ガンマ線を、オングストロームオーダーのピエゾ位置制御を行った同種の共鳴原子核を含んだ共鳴透過体を透過させることにより、透過ガンマ線の偏光、寿命(遅延時間)、波形(幅)の制御およびコヒーレントパルス列生成といった先進的なガンマ線の生成のための基礎的実験研究を行うことを目的とする。これを実現するために、高速MCS(マルチチャンネルスケーラー)システムと放射線同位体線源を用いた時間分解メスバウアースペクトル測定系の構築を実施した。これは、放射性原子核が第2励起状態から第1励起状態に遷移する際のガンマ線をトリガーとして、その後に第1励起状態から基底状態へ遷移する際に放出されるガンマ線に対して、ピエゾ制御系あるいはトランスデューサーを用いた高精度制御による変調を実現するもので、本研究にとって重要なものとなっている。また、偏光制御などのための多層膜ガンマ線源についても研究用原子炉による中性子照射および電子線型加速器による電子線照射により、核種を選択して生成が可能であることを実証することができた。これによりCo-57以外にも最適な核種を選択可能となった。 新たに開発した時間分解メスバウアースペクトル測定系および偏光制御ガンマ線源、高精度ピエゾ制御系を用いることで、偏光、寿命、および波形の制御が可能であることを示す結果を得た。これらの成果については既に装置開発に関する原著論文1報が掲載済みであるが、さらに論文投稿を準備中である。 今後は、これらの測定系および制御系を用いて先進的ガンマ線の生成に関する実験研究を推進していくものとする。
|