本研究はベクトルポテンシャルと電子ボルテックスビームの基本的な相互作用を調査し、相互作用の有無(もしくは上限)を決めることを目標としている。電子ボルテックスビームの進行方向と平行なベクトルポテンシャルを生成するために、電子ビーム軌道上に磁場を発生させることなくベクトルポテンシャルのみが存在する状態を生成することが重要となる。 軸上に漏えい磁場を生成しないように、1ターン成分を打ち消す巻き方を採用したトロイダルコイルを精度よく巻くために、3Dプリンタを活用した特殊コイルボビンを用いたコイルガイドにより2組のトロイダルコイルを準備した。 一方、干渉実験による相互作用の確認に関して準備を進めていたが、関連する領域研究者との議論により当初想定していた実験のセットアップにおいては分岐して進行する軌道角運動量の情報を消去することができず干渉実験が成立する条件ににはなっていないことが判明した。これは軌道角運動量量子数の異なるビームが空間的に識別可能な経路を取ると認識可能なためで、相互作用の有無にかかわらず干渉縞を生成することができない。何らかの形で軌道角運動量情報を消去する量子消去が可能であれば、干渉効果が期待できるが限られた空間内で検証を行うには専用の電子ビーム光学系が不可欠で実証試験の遂行には至らなかった。
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