研究課題/領域番号 |
16K13726
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高橋 和敏 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (30332183)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光電子分光 / 放射光 / レーザー / 表面・界面 |
研究実績の概要 |
本研究では、新規な2次元型角度分解光電子マッピング測定システムにおいて、励起光である真空紫外放射光とレーザー高調波の偏光制御性と測定系を高度化することにより、放射光とレーザーを励起光とした線および円2色角度分解光電子分光における新規な2次元バンドマッピング手法を確立し、従来法では高エネルギー分解能且つ高効率での実験が困難なために軌道・スピン依存2次元バンド構造の解明が困難である物質系についても適用可能な、特異なスピン依存表面電子状態を有する物質の軌道およびスピン分解での2次元バンド分散を明らかにするための測定手法を実証する。さらに、ポンププローブ時間分解測定により、軌道・スピン分解表面電子構造のダイナミクス研究へ展開する。 今年度は、ビームラインの後置集光鏡真空槽-光電子分析装置真空槽の間に、ビームライン光軸から待避可能な1/4波長板回転機構を整備し、波長板角度を制御測定ソフトウェアから変更できるようにした。これにより左右円偏光を任意に切り替えながら長時間計測をする際の経時的スペクトル変化に由来する疑似的な2色性が発生しないようにできた。研究が先行しているSi(111)上のBi(111)単結晶薄膜の表面電子状態について、円2色ARPESマッピングの測定を行った。続いて、グラフェンを基板として作製したBi(110)超薄膜について、円2色ARPES測定を行い、価電子バンドが膜厚に依存して特有の2色性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビームラインの後置集光鏡真空槽-光電子分析装置真空槽の間に、ビームライン光軸から待避可能な1/4波長板回転機構を整備し、波長板角度を制御測定ソフトウェアから変更できるようにした。当初から予定していたSi(111)上のBi(111)単結晶薄膜の表面電子状態についての円2色ARPESマッピングの測定に加えて、グラフェンを基板として作製したBi(110)超薄膜について、円2色ARPES測定を行い、価電子バンドが膜厚に依存して特有の2色性を示すことを見出すことができた。 以上のことから、本課題は現在までに概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
偏光制御したレーザー高調波を用いてのAR2PPEマッピング測定を、放射光でのARPES測定からの知見が得られているSi(111)上Bi(111)単結晶薄膜とグラフェン上Bi(110)超薄膜について行い、放射光での結果と比較考察から2光子励起過程での円2色性発現を明らかにする。 特有の表面状態が期待される重元素を含むSi(111)上2次元合金薄膜について、放射光での円2色ARPES測定とレーザーでの円2色AR2PPE測定を行い、局所軌道角運動量やスピン状態の知見を得る。静的な2次元マッピングをポンププローブ時間分解角度分解測定に発展させ、角運動量状態スピン状態などのダイナミクス測定に展開する。 各実験結果を総括し、これまでに開発を進めた2次元型角度分解光電子マッピング測定システムに、本課題で提案の、励起光である真空紫外放射光とレーザー高調波の偏光制御性をすることで可能となる、軌道やスピン選択での2次元光電子マッピング/ダイナミクス研究のための手法を確立するとともに、多様な表面電子状態における軌道/スピンの知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において偏光子取り付け部の設計を見直すことにより真空機器購入の予定を変更した。光電子の偏向走査に必要な電源部品、および測定装置に必要な真空ポンプを購入した。また、必要となった資料、文献複写のための支出を行った。当初予定の真空部品および光学部品の金額との差異により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
高額な備品についての支出は計画していない。非線形光学結晶や誘電体多層膜ミラーなどの光強度の短パルス光の照射により劣化する消耗品、研究を遂行する上で経常的に必要な、試料作製のための超高真空部品、試薬などの消耗品について支出する。また、学会発表に要する旅費、投稿論文校閲や投稿料、別刷のための費用などを計上する。
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